初の定期大会で向こう10年間の運動指針を策定/JP労組
(調査・解析部)
昨年10月の郵政事業の民営・分社化に合わせ、JPU(旧・全逓)と全郵政が組織統合して誕生したわが国最大の民間単組である日本郵政グループ労働組合(JP労組、22万4,300人)は18~20日、北海道・札幌市で第1回定期大会を開催した。大会では、向こう10年間の運動のあり方を示す「中期指針」を決めたほか、 (1) 民営化法に規定されている「3年ごとの見直し」への対応やグループ各社の主要課題の取り組み (2) 新たな労働力政策の構築や新人事・給与制度の実現 (3) 郵政事業の健全な発展に向けて政治連盟(団体)を設立すること――などの当面の運動方針を決定した。
民間労組として初めて臨んだ春闘に対する総括
冒頭あいさつした山口義和委員長は、民営化後初のグループ決算が連結純利益2,772億円と、順調なスタートを切る中で、民間労組として初めて臨んだ今春闘を振り返り、「08春闘は要員問題を緊急的な課題として取り組んだ。4,000人程度の新規採用に加え中途採用、(パートナー社員等から)月給制契約社員、正社員への登用――を合わせて9,200人拡大し、要員採用枠を1万3,261人とすることができた。なかでも郵便事業会社で、月給制契約社員から正社員へ2,000人の登用を約束させたことは、連合内でも大きな反響となったし、JP労組として統合メリットを大きく示せたと考えている」などと総括した。
そのうえで、「社員40万人が働く日本郵政グループは、新しいビジネスモデルを構築しながら、安定した経営とともにサービス水準の維持・向上を図っていく。その原動力とも言える要員確保は、適切かつタイムリーに行わなければならない。今後、私たちとしては経営状況を踏まえつつも、フロントラインの実態も把握し、JP労組としての労働力政策を示さなければならない」などと強調。要員のあり方について、さらに労使で議論を深めていきたいとの意向を明らかにした。
これに関連して大会では、労働力政策に関する労使協議を早期に開始できるよう取り組む方針を決定した。方針では、民営化以降、「定員」「計画人員」といった概念を前提にした国営公社時代とは異なり、企業経営上の業務量に照らして労働力を適切に確保できる新たなフレームが必要だと指摘。そのうえで、労組として「労働力政策検討プロジェクト」を立ち上げ、 (1) 新たな要員算出標準 (2) 労働力管理手法のあり方 (3) 理想的な労働力ポートフォリオ――の3点をめぐり、慎重かつ大胆に労使協議に臨むとしている。
創正期、変革期、成長期に応じた運動展開
初の定期大会では、向こう10年間の中期的な運動指針を示す「JP労組運動の創造と具体的展開に向けて」も策定した。
JP労組は昨年10月の発足時、「友愛、創造、貢献」をシンボル・フレーズに、自由にして民主的な労働運動を具現化するなどとする綱領を設定。それに加え、運動の基本的な方向性を示す「運動の基本目標」と「めざすべき労働組合の姿」を確認している。
これを踏まえつつ中期指針は、その実現に向けた運動のあり方をより具体的に示している。指針ではJP労組の運動は「改革者」「事業人」「労働組合」の3つの視点から構築しなければならないと指摘。そのうえで、結成から3年程度を「創生期」、金融二社・持株会社の株式上場から5年程度を「変革期」、金融二社の株式売却と移行期終了を「成長期」――とするステージを設定し、それぞれに対応した運動展開を描いている。
「創生期」には、パートナー社員組織率の50%(現在は約18%)への引き上げを含む30万人組織の建設をはじめ、新たな労使関係の構築(ユニオンショップ協定の締結)等に注力。「変革期」は、経営変化に対応したJP労組の自己変革や子会社の組織化(連合体組織のあり方)、参議員選挙への組織内候補の擁立等に取り組み、「成長期」には、株式持合間の制度づくりやグループ一体性の確保等が運動の力点になるとしている。