若手に求める資質はコミュニケーション力や忍耐力/金属労協調査

(調査・解析部)

[労使]

製造現場が若手に求める資質は、技能・技術が備わっていることよりもコミュニケーション能力や忍耐力があること――。自動車、電機、鉄鋼など金属産業の労組でつくる金属労協(IMF-JC、議長:加藤裕治自動車総連会長)は先ごろ、「ものづくり現場の若者雇用に関する状況調査」の集計結果(概要)を発表した。IMF-JCでは、「若手に求める資質は、技能・技術が備わっていることよりも、コミュニケーションや忍耐力であり、そのための学校教育の充実が求められる」などと話している。

調査は、昨年11月から今年2月にかけて金属労協加盟の115単組を対象に実施し、100単組からの回答をまとめた。回答の85%が、人手不足の顕著な事業所規模1,000人以下(組合員ベース)の中堅・中小企業。製造現場の技能系正社員の男女比率は8:2で男性が多く、年齢別比率では、34歳以下が全体の37.8%、35~54歳が46.6%、55歳以上が15.6%となっている。

多くの現場で若手人材が不足

それによると、製造現場における技能系正社員の数は、「ほぼすべての職種で不足している」との回答が34組織で最も多かった。次に、「現在は足りているが、今後5年間で、特定職種で不足が予想される」(18組織)、「現在は足りているが、今後5年間でほぼすべての職種で不足が予想される」(14組織)と続き、3分の1が今後、団塊の世代が65歳を迎える頃までに若手人材が不足すると考えている。現在、既に不足を感じている層(複数回答)として、「若手技能者」、「中堅技能者」を指摘する回答(ともに58組織)が突出していた。

若手の不足には、「(派遣・請負社員やパートなど)非正社員の活用・増員」で対応している現場が多数あったほか、正社員の残業や高齢者の活用で凌いでいるところも相当数あった。そんな対応の結果、中堅社員には、非正社員の指導負担や残業が増えるなどの弊害が出ている。

困難な若手正社員の地域採用

若手正社員の採用状況は、「困難である」(38組織)もしくは「やや問題がある」(30組織)とするところが多く、「問題はない」は25組織に過ぎない。他方、中途採用では、「問題はない」(28組織)が多いものの、「やや問題がある」(25組織)や「困難である」(21組織)もほぼ同じ割合を占めた。

「困難である」、「問題がある」と回答した組織に、その原因を聞くと(複数回答)、「採用したい地域において、そもそも若手人材が不足しているから」(38組織)、「若者の第三次産業への就職志向が強い」(25組織)、「会社の知名度が低いため若者が興味を示さないから」(21組織)などが上位だった。

必要な一緒に働くための人柄

製造現場が来て欲しいと考えている若者を学歴別にみると(複数回答)、「工業高校新卒」が圧倒的に多く、次に「普通高校新卒」や「経験者を中途採用」、「技術専門校・職業訓練校新卒」が続いた。

また、若手正社員に求める資質(三つまで回答)で多かったのは、「一緒に働くための人柄(コミュニケーション・チームワーク力)」(66組織)、「最後までやり遂げる忍耐力・ねばり強さ」(61組織)、「ものづくりへの情熱・興味」(53組織)、「社会人としての素養」(45組織)、「素直な気質」(43組織)など。半面、「技術・技能の専門知識」(18組織)や「手先の器用さ」(5組織)、「ものづくりの経験」(3組織)などを求める回答は少なかった。製造現場が、専門知識や経験より、組織にとけ込める人柄や忍耐力を求めていることがわかる。

ものづくり教育の充実を

現場の若手層のやりがいを高め、定着させていくために労組として取り組むべき課題(自由回答)についても、「賃金・労働条件の改善」(25組織)と「職場環境・福利厚生の改善・充実」(23組織)といった労働組合として当然の活動に加え、「職種別・職場横断的懇談、情報交換の場の設置」(14組織)や「各種相談体制の整備」、「人間関係・コミュニケーションの再構築」(ともに13組織)を訴える声が高まっている。

IMF-JCでは、「若手に求める資質は、技能・技術が備わっていることよりも、コミュニケーションや忍耐力、社会人としての素養であり、そのための学校教育の充実を求められている。子供たちにものづくりの重要性や楽しさを知ってもらう学校教育の強化や、ものづくりを重視する経済社会システムの構築が求められている」(松崎寛・政策局主任)などと話している。