低賃金と人手不足で過半数が「仕事を辞めたい」/日本医労連調査
(調査・解析部)
介護・福祉労働者の3人に2人が不払い残業をして、年休取得率も3割以下が過半数を占めている――日本医労連(田中千恵子委員長、14万6,000人)が14日に発表した「介護・福祉労働者の労働実態調査(中間報告)」でこんな結果が明らかになった。低賃金や人手不足、忙しさなどで、過半数が仕事を辞めたいと思ったことがあるなど、職員の過酷な労働実態が浮き彫りになっている。
4割強が所定内賃金20万円未満
調査報告によると、正職員の1カ月の所定内賃金は平均21万7,300円。職種別では、看護職(27万3,300円)やケアマネジャー(25万5,300円)が比較的高い半面、介護福祉士(19万4,600円)やヘルパー(17万5,200円)は平均値以下となっている。全体の4割強が20万円未満だった。
パート労働者の時給は、800~900円未満が29.4%でもっとも多く、以下、900~1,000円未満(21.1%)、1,000~1,100円未満(15.2%)の順だった。全体の36.2%が時給900円未満で働いている。
3人に2人が不払い残業を
昨年10月時点での時間外労働は、「なし」、「10時間未満」、「10時間以上」がそれぞれ約3分の1で、時間外労働を行った人の3人に2人は不払い残業をしていた。不払い残業の内容(複数回答)は、「通常業務の準備や片付け」(59.9%)や「記録」(57.2%)が多く、残業手当を「自分から請求していない」人が7割もいた。記者会見で医労連の担当者は、理由として、 (1) 施設の経営状況の厳しさを知る職員が自主的に残業手当を請求しない (2) 施設自体は365日24時間体制のため、仕事の境目の判断が付きにくい (3) ケアを主業務と捉えるあまり、付随する業務はボランティア的にこなすことがある (4) 自分の知識・技量不足のために時間外労働が発生していると思ってしまう――などを指摘した。
休暇についても、公休が「きちんとその日に取れる」人は6割弱、年次有給休暇の平均取得日数は7.4日で、取得率も「3割以下」が過半数を占めるなど、休むこともままならない実態が読み取れる。
人手不足や忙しさで転倒事故も
そこまで働いても、「利用者に十分なサービスが提供されている」と思っている人は44.9%(「できている」と「ほぼできている」の計)に過ぎない。できていない理由(2つまで選択)は、「人員不足による過密労働」が73.0%と他を大きく引き離してトップ。次に「能力や技量の不足」(27.4%)、「メンバーの出入りが多い」(20.9%)、「主な業務意外の業務が多すぎる」(18.6%)が続く。
さらに、この1年間の利用者に関する事故の有無を尋ねると、「事故は起こしていない」が54.6%を占めた一方で、「転倒・転落」があったとする回答も36.5%に上った。原因(3つ選択)は、「現場の忙しさ」(71.8%)、「人手不足」(45.7%)、「知識・技能の未熟さ」(43.4%)が多い。
過半数が健康不安を訴える
そんな職員たちの健康状態は、「健康に不安」があったり、「病気がち」の人が半数(51.2%)を超えた。疲れの回復具合も、「疲れが翌日に残ることが多い」と「休日でも回復せず、いつも疲れている」を合わせて、6割強。「腰痛」(53.9%)や「肩こり」(51.1%)を過半数が感じているうえ、精神的な疾患と関連する可能性のある「頭痛」(20.6%)や「抑鬱感」(11.5%)、「不眠」(12.6%)も目につく。また、妊娠経験のある女性の約7割が「ひどいつわり」(40.4%)や「切迫流産」(24.7%)、「貧血」(21.3%)などの不調を訴えている。
こうした状況にあって、「仕事を辞めたいと思ったことがある」人は55.3%(「いつも」「しばしば」「時々」の計)。その理由(複数回答)は「賃金が安い」(50.3%)と「忙しすぎる」(45.0%)が突出していた。
日本医労連では、「今回の調査結果から、賃金や人員体制など介護・福祉労働者の労働条件の改善が不可欠な課題となっていることが浮かび上がっている」と話している。
調査は、介護・福祉労働者の生活や健康、労働実態などを把握し、労働条件の改善などに活用することが目的。昨年12月から今年3月にかけて、全国の介護・福祉施設や病院のうち医労連加盟組合のある施設を中心に調査票を配布し、41都道府県の介護職関係職員(介護福祉士やヘルパー、ケアマネジャーなど)6,818人から得た回答をまとめた(回収率27.3%)。
回答者の男女比は2対8。雇用形態は正職員が65.5%と約3分の2を占めた。職員全体に占める非正規職員の割合は「フルタイムのパート」が17.3%で、「短時間パート」と「臨時・パート以外の有期契約職員」はそれぞれ10.1%など。年齢構成は、「30歳未満」と「30代」「40代」「50代以上」がほぼ4分の1ずつで、約6割が勤務年数5年未満だった。職種別では、「介護福祉士」(30.0%)「ヘルパー(1~3級)」(22.2%)、「看護職」(16.7%)、「ケアマネジャー」(7.0%)が多い。