客室乗務員の全面委託化に反対/航空労組連絡会

(調査・解析部)

[労使]

パイロットや客室乗務員、整備士、地上職員など航空関係の52組合・約1万2,000人でつくる「航空労組連絡会」は24日、衆議院第二議員会館で集会を開き、国土交通省航空局が3月末を目途に作業を進めている、客室乗務員の全面委託化を可能にする運用指針の改正について、「国民、利用者の安全輸送を守る立場から認められない」と強く反発する声明を採択した。

指針改正は「空の安全に逆行」

 客室保安業務の委託化をめぐっては、国土交通省が2002年6月に、「運航に係る業務の委託の運用指針」等を策定。安全を確保する上で必要な一定の要件を満たす場合に限り、客室保安業務の管理(とその補佐)を除く業務委託を可能にしたものの、実際の活用は進まなかった経緯がある。

その後、規制改革会議が昨年5月、「規制改革推進のための第一次答申」の中で、「他の航空会社の従業員の活用を容易にするため、運航の安全確保を前提として機長の指揮命令の実効性の担保手段を明確化した上で、運客一体化条件を見直すべき」などとして、客室保安業務の管理を含めた全面委託化(別会社化)を検討するよう提起。これを受け、国交省航空局が審議を進めた結果、3月末に運用指針が改正される予定になっている。

こうした状況を踏まえて開かれた緊急集会では、山口宏弥議長が挨拶で、「今回の指針改正は、運客一体化(機長等の運航乗務員と客室乗務員の責任者は同一会社でなければならないとする規則)の見直しありきで、安全後回しで絶対に認められるものではない」などと強調。その上で、「機材、従業員の米国との相互認証や、在日外国人の在留資格の緩和も併せて検討されており、パイロットや客室乗務員にとどまらず、航空業界に働くすべての労働者が外国人に置き換えられかねない状況に強い危機感を覚える。空の安全に逆行するような規制緩和の流れを跳ね返していこう」などと呼びかけた。

経験の蓄積や技術の伝承が疎かに

集会では、参加した客室乗務員連絡会が「航空輸送の安全を確保するため、航空法104条等に定められた保安業務を行う客室乗務員は、経験と熟練が不可欠な重要な職務。緊急避難誘導をはじめ機内火災の消化、安全阻害行為・急病人/負傷者への対応などを行うほか、常に機体の異常な音や臭いにも注意を払い、機長に不測の事態が発生した場合は指揮代行権も継承される。全面委託で使い捨てということになれば、経験の蓄積や技術の伝承が疎かになり、まさに安全の問題に直結しかねない」などと指摘。その上で「運航乗務員とその権限代行を担う客室乗務員が一体にあることでチームワークが維持され、客室の安全性が担保される。旅客の安全を守る最前線で働く者として、全面委託を認めることはできない」などと訴えた。