昨年を480円上回る6,930円/UIゼンセン同盟が中間集約

(調査・解析部)

[労使]

繊維や化学、流通、外食サービスなど幅広い産業を組織する民間最大産別のUIゼンセン同盟(約100万人)は19日、春季交渉の状況を公表した。それによると、統一闘争に参加する1,959組合中、同日までに回答を引き出したのは約300組合で、本部の妥結承認を得たのは179組合。このうち定昇などの昇給昇格制度が確立している171組合の集計で、単純平均の引き上げ額は昨年を480円上回る6,930円(2.50%)となっている。

ベア分は昨年ほぼ横ばいの1,217円

UIゼンセン同盟は可処分所得の改善を図る観点から、賃上げ要求基準を、「制度に基づく昇給昇格(賃金体系維持分)とは別に1%または2,500円」あるいは「賃金体系維持分の社会的水準を含めて7,000円以上」――に設定。自動車、電機といった交渉リード役に左右されない主体的な相場形成をめざし、 (1) JC集中回答を横にらみにしつつ3月12日~13日に回答を引き出す先行組(Aグループ) (2) その結果を見ながら交渉し3月18日までに回答を引き出す追随組(Bグループ) (3) 以上の動向を踏まえ全組合が3月末までに妥結をめざす(Cグループ)――といった梯団方式を組み、交渉に臨んだ。

その結果、今統一闘争に参加する1,959組合のうち、19日段階でAグループは約120組合、Bグループでは約180組合が回答を引き出した。UIゼンセン同盟では妥結権を本部に委譲しており、うち妥結承認を得たのは179組合。定期昇給等の賃金制度を確立している171組合の集計で、引き上げ額は単純平均で6,930円(2.50%)、加重平均は6,835円(2.37%)となり、ともに昨年実績(単純:6,450円・2.32%、加重:6,615円・2.28%)を上回った。

このうちいわゆるベアに相当する賃金引上原資分は、単純平均で1,217円(0.44%)、加重平均では1,061円(0.36%)――となり、昨年実績(単純:1,126円・0.41%、加重:1,228円・0.42%)と比べ、単純平均では90円近く上回っているものの、加重平均では160円ほど下回るなど、ほぼ横ばいの状況になっている。

部会別では流通、外食サービス関係が健闘

繊維関連、化学、流通、フード・サービス、生活・総合、地方の6部会別に主な妥結状況をみると、繊維関連は同日までに妥結承認された23組合の単純平均で、賃金引上原資716円を含め5,551円(1.97%)を獲得。化学部会は19組合で同1,015円を含め6,973円、流通部会は59組合で同2,225円を含め7,088円、フード・サービス部会は35組合で同11,841円を含め7,280円――などとなっている。落合清四会長は「内需が冷え込んでいるにも係らず、流通、サービス、外食関係が健闘している」などと評価した。

パートの時給も昨年上回る15.7円増

一方、組合員の約4割を占めるパートなどの「短時間組合員」については、昇給・昇格制度がある場合は「1%以上の賃金改善」、制度がない場合は正社員の平均的な賃上げ要求率に準じつつ均衡を考慮して、 (1) タイプA(正社員と職務も人材活用の仕組み・運用も同じ)は30~40円目安 (2) タイプB(正社員と職務は同じだが人材活用の仕組み・運用が違う)は3%または25円目安 (3) タイプC(正社員とは職務も人材活用の仕組み・運用も違う)は主旨を踏まえて要求――などとする要求基準を設定した。

その結果、同日までに妥結承認を得た37組合(組合員数約16万3,000人)の集計で、加重平均では昨年実績の12.6円(1.5%)を3.1円上回る15.7円増(1.7%)を獲得。タイプ別でも(タイプAは該当なし)、タイプB(14組合)が24.4円増(2.4%)、タイプC(24組合)が14.5円増(1.5%)、分類不能タイプ(8組合)が20.4円増(2.4%)――などとなり、いずれも昨年実績(B:23.6円増、C:11.1円増、分類不能:18.9円増)を超えた。

個別には、イオンモールが(タイプC)が45円増、ヨークベニマル(B)が37円増、イズミ(B)が29円増――と牽引したほか、約6万人のパート等を組織し、地場への波及効果も大きいイオン(B・C合算)が12.6円+αなどとなった。制度改善に絡む回答も相次いでおり、15組合が正社員への転換制度の導入で合意、9組合が正社員と同等水準の慶弔休暇の付与、5組合が正社員並みの通勤手当を支給――といった回答を引き出している。