中堅・中小の賃金改善、前年実績を上回る/連合と金属労協などの集計

(調査・解析部)

[労使]

連合(高木剛会長)は21日、中小企業の労組で構成する「中小共闘センター」(委員長:河野和治JAM会長)の08年春季生活闘争(春闘)の妥結状況をまとめた。月例賃金の平均引き上げ額(単純平均)は、定昇相当分を含めて5,782円で、昨年に比べ290円アップ。引き上げ率も2.22%と昨年を0.12ポイント上回った。一方、自動車、電機、鉄鋼など金属産業の労組でつくる金属労協(IMF・JC、議長:加藤裕治自動車総連会長)も19日に中堅・中小登録組合の回答状況を明らかにした。賃金改善を獲得した88組合平均の賃金改善分は847円となっている。

中小の賃上げ、前年同期比290円増/中小共闘

連合の「中小共闘」は、中小企業労組の賃金低下に歯止めをかけようと04春闘に発足。5年目となる今春闘は、中小労組の賃金カーブ維持分を確保したうえで賃金の底上げをめざす方針を掲げた。

19日までに集計した組合員数300人未満の232組合の賃上げ額は、単純平均で5,782円(定昇分込み)。前年同時期(5,492円)を290円上回った。規模別では、100人未満が前年比204円増の5,861円、100人以上300人未満は前年比382円増の5,699円となった。産業別にみると、商業・流通で平均より1,000円ほど高い6,790円(前年比756円増)の回答を引き出している点が目立つ。また、中小共闘が賃金カーブ維持(定昇相当分)の目安としている4,500円を上回った組合は登録組合の79.0%で、こちらも前年同時期を2.2ポイント上回った。この結果について河野氏は「逆風のなかで、昨年を上回る賃上げの流れになっている。(中小の交渉が本格化する)3月末に向けて交渉を強化したい」などと述べた。

なお、連合が同日まとめた全体の第2回集計結果によると、この日までに回答を得た870組合の定昇分を含む平均賃金引き上げ額は6,195円だった。前年と同一の740組合で比べると、134円プラスの6,225円、率でも前年を0.03ポイント上回る2.03%となっている。

パートの時給は19.68円アップ/パート共闘

一方、今春闘で3年目を迎える「パート共闘」(座長:桜田高明・サービス・流通連合会長)が同日まとめた「パート労働者の待遇改善調査」によれば、パート労働者の時間給の引き上げを求めた298組合のうち、57組合が回答を得た。時給換算引き上げ額(単純平均)を、前年と比較可能な49組合でみると、19.68円で前年比4.18円増えている。

また、同共闘が重点項目に掲げた通勤手当の正社員と同じ基準による支給は要求した94組合中73組合、慶弔休暇の正社員並み付与も要求した93組合中55組合で前進した。正社員転換制度の導入も、253組合が要求し、154組合で前向きの回答を引き出している。組織化の取り組みでは、昨年7月以降、4産別70組合の合計で1万2,070人の組織拡大を果たした。

大手を上回る回答も/JCの中堅・中小労組

金属労協は昨年の春闘から、中堅・中小組合を事前に登録させ、回答結果を企業名と合わせて開示している。従前はおよそ50の大手組合の回答だけを公表していたが、各業種や地域で影響力のある企業名と賃上げ回答を発表することで、中小・地場への波及効果を狙いとしている。昨年は135組合が登録した。

2年目の取り組みになる今春闘では、152組合がエントリーし、150組合が定昇相当分以外の賃金改善を要求した。19日までに回答を得た全組合(123組合)で定昇などの賃金構造維持分を確保し、108組合が賃金改善分を獲得した。このうち、今春闘で向こう2年間の賃金交渉を行った基幹労連を除く88組合の賃金改善の水準は平均で847円。昨年と比較可能な55組合でみると、賃金改善は848円となり、昨年実績を81円上回った。

産別ごとにみると、自動車総連傘下では京三電機(制度維持分+1,400円)やアート(賃金制度維持分4,500円+水準向上・実態改善分1,600円)、セキソー(賃金カーブ維持分4,100円+是正分1,300円)などが1,000円超の賃上げを果たし、トヨタ、日産など大手メーカーで、1,000円程度で収束した賃金改善分の回答を上回った。電機連合とJAMは、多くが1,000円を確保。電機連合の登録組合では、日本電気硝子が定昇相当分込みで9,000円相当の改善を果たした。JAMも、輸出で業績好調のコマツユニオン(賃金改善分2,100円)と三社電機の(同2,200円)の高額回答が目立つ。

記者会見した加藤議長は「(中堅・中小の)数字は大手が引き出した以上に昨年実績を上回る回答があり、努力が実っている。JCの狙いとする底上げと賃金改善の流れを少しでも上を向いた形で広げていきたい」などと評価した。

なお、金属労協は同日、大手登録組合の回答状況も発表した。登録した57組合全てで賃金構造維持分を確保し、54組合が賃金改善分を獲得。37組合の平均で1,026円と、昨年同時期(31組合、957円)と比べて67円増加している。

加重平均6,195円に上昇/国民春闘共闘

一方、全労連などでつくる国民春闘共闘委員会(代表幹事:坂内三夫・全労連議長)は24日、2回目の回答集計結果を発表した。登録組合813組合のうち195組合が回答を引き出し、組合員一人あたりの平均賃上げ額は加重平均6,195円、率では1.93%となり、前年同期に比べ額で440円、率で0.07ポイント増加した。単純平均は、前年同期比140円増(0.01ポイント増)の5,967円。パート等の賃上げ回答は、66組合の平均引き上げ額で27.2円(前年比0.1円増)だった。