大手回答がブレーキに/JAM

(調査・解析部)

[労使]

金属機械メーカーを多く組織するJAMは、牽引役の大手各社の賃金改善の伸び悩みが影響して、苦しい交渉を余儀なくされている。11~12日にかけて回答を引き出した先行組合の妥結結果は昨年実績並みにとどまり、2,000~2,500円の賃上げ要求に対し、1,000円超えがやっとの情勢だ。

10円玉の交渉でようやく昨年実績並みに

JAMが11日時点でまとめた妥結状況によれば、要求を提出した組合(1,695組合)のうち、決着した70組合の平均賃上げ額は5,485円。この70組合について、前年と比較すると237円増と、一見、好調のように映る。ただし、「このなかには1万円を超えるベアを獲得した労組が含まれており、それを除くとほぼ昨年並み」(豊泉副会長)という。

金属労協の登録組合(9組合)に目を向けると、山武やシチズンなどがほぼ昨年並みの回答を引き出し(山武が個別賃金で1,500円、シチズンが同1,200円)、平均方式の組合でも島津が前年を2円だけ上回る1,064円、ヤンマーも昨年比7円増の1,065円で妥結した。方や、横河電機は前年実績より262円低い1,057円だった。

河野和治会長は記者会見で、「今週に入って厳しい環境になった。比較的好調なところがマイナスで妥結した影響も大きかった。(JC登録の大手組合は)概ね、1,000円を超えて(回答を引き出して)いるが、最後は10円の厳しい交渉で昨年実績を上回ることが十分できず、横ばい確保にとどまってしまった」などと、難しい交渉展開を余儀なくされたことを報告した。回答指定日を前に自動車大手が昨年と同額もしくは昨年実績を下回る回答を固めたことなど、リード役の動きが影響した形だ。そのうえで、「月例賃金にウエイトをかけてきただけに、今後の中堅・中小各組合の交渉に注目したい」と述べ、これから交渉が本格化する中堅・中小企業での交渉に注力する考えを示した。

時間外割増率では改善の回答も

一方、時間外割増率については、島津が休日割増50%(現行40%)、日本精工も1日3時間を超えた部分から35%(現行4時間を超えた部分から35%)など12日時点で4組合が具体的な回答を引き出したほか、「数字には表れていないが、労働時間にかかわる取り組みのなかで「36協定の適正化」や特別条項の見直し、労働時間管理に具体的に労使で取り組む体制が広がっている」と述べた。