トヨタ前年同額の賃金改善1,000円、日産アップ、ホンダはダウン

(調査・解析部)

[労使]

自動車メーカー各社は12日、組合に対して一斉に回答し、大手3社ではトヨタが前年同額の賃金改善1,000円(賃金制度維持分含め7,900円)を回答したほか、日産自動車が昨年を300円上回る1人当たりの賃金改定原資7,000円の満額回答、一方ホンダは昨年を100円下回る賃金改善800円を回答した。また、マツダ、いすゞ、日野自動車、ヤマハが昨年を上回る賃金改善を回答するなどメーカー11社中5社が前年実績を上回った。

自動車総連は今春闘では特に産業内の格差是正を重視し、6年ぶりに具体的な要求数値を設定し、「1,000円以上の賃金改善」を統一要求とした。これを踏まえ、大手メーカー労組が決めた賃金改善要求は、ほとんどが前年同額で、トヨタ労組は8,400円(賃金制度維持分6,900円、賃金改善分1,500円)、日産は一人あたりの賃金改定原資7,000円、ホンダは1,000円の賃金改善を求めた。三菱自工労組は賃金カーブ維持分を労使で確認し、昨年同様に要求を断念したが、その他のメーカー労組も1,000円から2,000円の賃金改善分を2月上旬に要求提出した。

しかし、交渉が始まってからサブプライム問題や原材料の高騰に加え、「急激な円高があり、経営側の対応が厳しくなった」(萩原克彦自動車総連事務局長)ため、昨年以上を目指す組合と経営側の溝は大きく、交渉は難航した。

交渉けん引役のトヨタ自動車では、組合側が最終局面まで、1,500円の要求満額を目指したものの、円高の高進など先行き懸念が拡大し、経営側の賃金の引き上げに対する慎重姿勢を崩すことができず、前年と同じ賃金改善分1,000円で決着した。

自動車総連の加藤裕治会長は金属労協の記者会見で、トヨタが前年同額決着となったことについて、「他が昨年に上積みを取っているし、そういう意味では残念だと率直に言わざるを得ない。全体として昨年実績にこだわったので、組合としては最低限のものとして受けたのだろうと思う」との感想を述べた。

一方、1,000円を要求したホンダは昨年を100円下回る800円、逆に日産は経営体質が改善されたとの判断から組合側要求通りの7,000円を回答した。その他のメーカーでは輸出や海外事業が好調なマツダ、日野、いすゞ、ヤマハが月例賃金の引き上げ幅を昨年よりアップしたが、1,300円を要求した富士重労組にはゼロ回答が示された。

なお、自動車総連の集計によると、今回、賃金改善要求を提出した組合は昨年より100増え、総連全体で約1,010組合となっており、要求の平均額で総連加盟のメーカー組合の平均を300円程度上回っていることから、後続組の積極的な交渉によって、自動車産業内の格差是正につなげたいとしている。

一時金は満額回答が相次ぐ

自動車業界全般の好調な業績を反映して、一時金回答では満額が相次ぎ、メーカー11社のうちいすゞとヤマハを除いて9社が労組の要求どおり満額回答した。トヨタは5カ月+75万円(253万円)の要求通りの回答を示し、9年連続の満額回答で決着。このほか、日産も前年を0.1カ月上回る6.1カ月、ホンダも要求通り6.6カ月で妥結するなど、全体的に高水準での決着となった。