連合・日本経団連がトップ会談/「08年春闘」が実質スタート

(調査・解析部)

[労使]

連合(高木剛会長)と日本経団連(御手洗冨士夫会長)は23日、都内で労使首脳懇談会を開き、08年春闘の議論が実質的にスタートした。連合側が「内需拡大には賃上げが重要」と強く訴えたのに対し、日本経団連側は「支払い能力に応じて個別企業で決めるべきだ」として、横並びの賃上げに抵抗感を示しつつも、好業績企業の賃上げには容認の姿勢をみせた。

内需拡大には賃上げが重要

冒頭、日本経団連の御手洗会長は「経済は基本的に回復基調だが、サブプライムローン(米国の信用の低い個人向けの住宅融資)問題が膨らみ、株価は下がっている。原油、資源価格も高騰しており、建築物の大幅な落ち込みなどの課題も発生している」などと指摘。景気の不安要素が少なくないとする一方で、「悲観論からは何も生まれない。積極的に経済の成長・拡大を図っていく必要がある」とし、「付加価値をどう上げていくかは、労使の共通課題。国民所得の増大にも直結することであり、ぜひ議論したい」と述べた。

連合の高木会長は、「可処分所得が低下しており、働く側に配分が回っていない。内需拡大には賃金の引き上げが極めて重要だ」と賃上げの必要性を強調。さらに、働く人を取り巻く環境を、「長時間労働が非常に多いことが世界的にみても日本の大きな特徴だ」として、労働時間の削減と時間外労働の割増率の引き上げの実現を強く求めた。非正規労働者の処遇問題についても、「非正規雇用は総じて低処遇で、年収200万円以下の層も1,000万人を超える。この改善が急務だ」と訴えた。

時間外労働問題は平行線の議論に

続く懇談では、連合側が「(短期的な業績を)一時金にシフトするとの経営側の声もあるが、中小・非正規労働者はあまり(影響を受け)ない。月例賃金の伸びが消費に結びつくとのデータもある。月例賃金を上げていくべきだ」と指摘。企業業績の向上への貢献は給与に反映させるべきだとした。

また、ワーク・ライフ・バランスの課題にも触れ、「総実労働時間の短縮や時間外労働の削減には働き方の見直しが必要。その一つの方策として、国際的にみても低い水準である割増率の引き上げが重要だ」と理解を求めた。

これに対し、日本経団連側は「経営側の見方では、日本の労働分配率は高水準。賃金は下方硬直性があり、(景気の)回復過程で低下し、悪化時に高くなる実態もある」などと、連合の主張に異論を唱えたうえで、「賃金は支払い能力に応じて個別企業の労使で決定すべきであり、企業によってバラツキがあることは避けられない」とクギを刺した。横並びの賃上げをけん制しつつも、業績が拡大した企業の賃上げには一定の理解を示した格好だ。

連合の求める時間外労働の割増率のアップに関しては、「残業を奨励する可能性があり、違う方法で時間外を削減するアプローチをすべきだ」と反論。また、「労働時間管理が課題になっているのは、現在の雇用労働制度に問題があるのではないか。フレックス制や裁量労働制があるが、多様な働き方は実現していない。労使でその議論を改めて行う必要がある」とも主張した。時間外労働問題に係わる労使の議論は噛み合わないままだった。

この他、連合側からは「同一価値労働同一賃金の原則が揺らいでいる。今後、女性の労働力を活用するには男女差別の解決や育児支援の強化などが必要だし、若年層への職業訓練や高齢者の社会参画も重要。労働は生産性向上の原点であることを経営側は見失うべきではない」などの発言があった。日本経団連側からは、「少子化・労働力人口減少のなか、女性や若者、高齢者などが個人のライフスタイルに見合った働き方ができることが大事。そこに課題が生じれば潰していく必要はある」などの意見がでた。

08年春闘は、今月下旬から来月にかけて、各労組が具体的な要求を決定。3月中旬のヤマ場に向けて労使交渉が行われる。