「1,000円以上の賃金改善分」を設定/自動車総連

(調査・解析部)

[労使]

自動車総連(加藤裕治会長、組合員数72万人)は16日、横浜市内で中央委員会を開き、今季交渉にのぞむ「2008年総合生活改善の取り組み方針」を確認した。具体的な要求基準として、平均賃上げで「1,000円以上の賃金改善分」を求める方針。02年以来6年ぶりに統一要求で具体額を設定した。

6年ぶりに要求額を明示

自動車総連の賃金引上げに関する要求基準は、「1,000円以上の賃金改善分」を設定する平均賃金引上げと、技能職中堅労働者の目指すべき賃金水準を設定する「個別ポイント絶対水準要求」の並列方式による2本立て。

平均賃金引上げについては、各単組が個人別賃金データを把握した上で作る賃金カーブが基礎となる。その上で、個別企業の経営状況や各組合の実態に応じた取り組みを行う。具体的には、「各組合は水準向上や格差・体系是正に向け、1,000円以上の賃金改善分を設定する」ことを基本とし、そのうえで1,000円を「少なくとも自動車産業で働く者が、最低これだけはいるという要求の下限を示した数字」(総連本部)と位置づけた。自動車総連は06、07年とも「賃金改善」を要求する方針で臨んだが、産別としての要求額は示さなかった。08年春闘では、6年ぶりに要求額を示した格好だ。

なお、個別ポイント絶対水準要求では、「技能職中堅労働者(中堅技能職)」を共通の銘柄として、各単組が絶対額で要求する。牽引役のトヨタ、日産、ホンダのトップ3労組がめざす「プレミア水準」を37万円、全組合が目指す目標基準を32万5,000円などと設定した。

一時金は年間5カ月を基準とし、最低でも昨年獲得実績以上をめざす。また、業種間・企業規模間に拡大しつつある賃金格差の是正や、非正規労働者の処遇改善の取り組みも強化する。

労働時間短縮もミニマム運動課題に

一方、総実労働時間短縮と時間外・休日労働の割増率の引き上げもミニマム運動課題として取り上げた。自動車総連では、所定労働時間が個別企業ごとに異なる現状を勘案し、「全部門で総労働時間1,800時間台」を一応のめざすべき姿としたうえで、傘下労組が2010年までの中期方針「START12」を策定。年休の取得や残業時間の削減などに取り組む方針を打ち出している。

また、時間外割増引き上げについては、超過勤務が雇用安定のためのバッファーとなってきた経緯などを踏まえ、連合が08年春闘で展開する「割増率共闘」には参加しない。平日50%、休日100%への時間外労働の割り増し率引き上げは目標として継続協議するものの、具体的な取り組みは傘下労組の判断に委ねる。

国内市場低迷に危機感を表明

あいさつした加藤会長は「自動車の国内販売台数が10年前の780万台から535万台に急落して30年前の水準になった。」ことを挙げ、国内生産、国内販売の維持が労使関係の要であるとして、「自らの死活問題として2008年の生活改善取り組みを捉える必要がある」と強調した。具体的には、「勤労者の実質収入の立て直しによる消費拡大で内需拡大をはかる」とともに、「将来不安、不安定な若者の雇用」を是正する必要があるとした。また、国内販売の低迷については経営側の責任が大きいとし、自動車総連として積極的に働きかけていくと述べた。

なお、討議では、日産労連などから「1,000円以上の賃金改善」に積極的に取り組むといった意見が相次いだ。

今後、大手メーカーは2月13日に一斉に要求を提出し、車体・部品部門はその1週間以内に要求提出を完了。加盟する金属労協が集中回答日に設定している3月12日に向けて、交渉を追い込む。