2年で3,000円の賃金改善要求を提起/基幹労連討論集会

(調査・解析部)

[労使]

鉄鋼、造船重機、非鉄金属の労働組合で構成する基幹労連(内藤純朗委員長、25万人)は5、6の両日、静岡県熱海市で討論集会を開き、08年の春闘方針を討議した。向こう2年間の賃金改善要求として、1人当たり月額3,000円を基準とする統一要求案を打ち出している。

基幹労連が2年サイクルの統一要求を掲げるのは06年春闘に続き2回目。06年の交渉では、働く人への投資で魅力ある労働条件をつくり上げ、産業・企業の競争力強化との好循環を生み出すとの考え方を基本に据え、従来型のベースアップ要求ではなく、月例賃金の改善を求めることを打ち出した。その結果、大手労組の多くが07年4月から1,000円強もしくは1,000円程度の新規財源を投入して賃金改善を図ることで決着している。

第2ラウンドとなる08年春闘でも、基本的な考え方は踏襲する。内藤委員長はあいさつで、「人への投資が産業の発展や企業の競争力向上につながる」などと強調。「この考え方は労使共通の認識とすべきもの。そうなればおのずと結果はついてくるし、前向きな議論ができる」と訴えた。

わかりにくさの解消を

また、内藤委員長は、「06年春闘では成果が上がったが、組合員に分かりにくかった」と指摘したうえで、その理由を、「従来型の要求根拠である『物価上昇+生活向上分』という考え方や、一律ベアというシンプルな要求と比べると(賃金改善の)概念が分かりにくい。また、妥結時点で(経営側から)具体的な水準が示されず、実施時期が(1年後に)延びたこともあった」と説明した。そのうえで、要求根拠に関しては「マクロ事情の要求や一律ベアでは経営側が土俵に乗ってこないことを承知していた」とし、そのことを踏まえて「『賃金改善』で取り組もうとなったのだから、繰り返し説明して解決するしかない」との考えを示した。水準や実施時期については「要求で水準や時期を指定しているのだから、それに(経営側が)応えて実行すれば克服できること」と強調。08春闘では、金額を明確にして08年4月1日から実施する回答を強く求める姿勢を明らかにした。

要求が前回と同水準になったことについては、「06年春闘を上回る要求を求める声もあったが、取りきる決意で提起した」と述べ、理解を求めた。

鉄鋼部門は交代勤務労働者にスポット

具体的な賃金改善の要求額は「08、09年度の2年間で3,000円を基準」とする。要求額自体は06年春闘と同じだが、課題を洗い出して要求根拠を積み上げた結果、3,000円を超える要求を行う単組が出ることも想定される。このため、一定の幅を持たせる意味で「基準」の文言を加えた。また、要求方式は、鉄鋼部門は35歳標準労働者方式で3,000円、船重部門などは平均方式で3,000円とし、前回同様、この違いも認め合うこととした。

賃金改善の財源配分の仕方も、前回より明確にした。全員の賃金を一律に底上げするベースアップだけでなく、賃金カーブの是正や全額仕事給配分、特定の階層への重点配分など、各単組が幅広い観点で検討して要求を組み立てることは変わらないが、今回は諸手当も含めることも明言。そのうえで、「どこまで含めるか」についてはそれぞれの部門(鉄鋼、造船重機、非鉄金属)の判断を前提に、各単組に委ねることにした。

例えば、鉄鋼部門の大手労組は、交代勤務労働者に焦点を当て、深夜手当の引き上げで2,000円、休日労働手当の増額で500円を確保し、それに各単組の500円分の独自要求を加えて3,000円を求める方向で検討している。

連合の「割増率共闘」にも参加

また、08年春闘では、長時間労働の是正にも取り組む。連合の「割増率共闘」に参加して、時間外割増率を、 (1) 月45時間未満の時間外30% (2) 月45時間超の場合50% (3) 休日労働50%――にそれぞれ引き上げるよう求める。

この他、ボランティア休暇制度の新設・充実や裁判員特別休暇制度の新設、労働災害付加補償の引き上げなども要求する。