賃金の「底上げ」で格差是正を/JAMの新運動方針

(調査・解析部)

[労使]

機械金属産業の中小企業を多く組織化するJAMは8月29日から2日間、静岡県熱海市で定期大会を開き、向こう2年間の運動方針を決めた。規模間や雇用形態間さらに企業グループ内などに存在する、「行き過ぎた格差の是正」を最重点の課題としている点が特徴。あわせて組織拡大に力点をおく。役員選挙では、小出幸男会長、大山勝也書記長が退任し、新たに河野和治副会長(NTN労組出身)、斉藤常副会長(日本電子労組出身)をそれぞれ会長、書記長に選出した。

「行き過ぎた格差の是正」については、「高いところから低いところに原資を再配分する『格差是正闘争』という概念を捨てて、『底上げ闘争』という考え方に立つ春闘改革を図ることが重要」(小出会長)とし、(1)最低賃金以下の派遣・請負・パート等の一掃と地域別最賃の底上げ、(2)派遣・請負・パート等を含む企業内最賃の底上げ、(3)大手労組を中心とした資本系列にある関連会社の賃金の底上げ-などの取り組みを強化するとした。「底上げ闘争」は、労働組合の果たすべき社会的責任を自覚するものと位置付け、「上げ幅のみの共闘体制から賃金を水準で議論できる体制作りに向けて、新たな共闘体制の構築を目指すことが重要」(小出会長)としている。

結成時(1999年)の約47万人から減少を続けてきた組織人員が、初めて上昇に転じ、約37万人(06年10月現在)となったものの、定年退職者が2010年にピークを迎えることもあり、組織強化・拡大も重要課題の一つ。冒頭のあいさつで小出会長はこの点に触れ、「自分の職場は自分で守る」という考えに立った組織拡大を強調した。具体策としては、従来の31の地方組織を17に再編して、専従組合員を集中的に配置。地域・単組間の経験交流の活発化、専従者の単組への世話役活動の強化、組織化を進める人材の積極的な育成をねらう。組織拡大には、パート労働者、定年退職以降の継続雇用者、派遣・請負労働者も対象にするほか、派遣・請負労働者の直接雇用への転換に向けた取り組みも進める。

議論では、地方組織再編による地域、単組での運動の活性化について、「そうとうな意気込みがないとできない。本部としても、地方の活動をきちんと吸い上げて、全体の運動として推進してほしい」などの意見が出された。