職種別賃金要求方式の進化を/電機連合定期大会

(調査・解析部)

[労使]

電機連合(中村正武委員長、62万人)は5,6の両日、大分市で定期大会を開き、昨年の大会で確認した「2006・2007年度運動方針」を補強するワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取り組みなどを決めた。07年春闘については、「中闘組合(大手労組)の大半が実質1,000円に相当する賃金改善を獲得したことは高く評価できる」としながらも、職種別賃金要求方式のあり方などの課題をあげ、「検討を加速させる」との考えを示している。

07年春闘の評価

電機連合の大手労組は、07年春闘から職種別賃金要求方式に移行。開発設計職(30歳相当)と製品組立職(35歳相当)から各単組が職種を選択して、その代表ポイントと絶対額を決めるとともに、統一要求である一人あたり月額2,000円以上の賃金水準の改善を要求した。また、改善の引き上げ幅に加え、開発設計職で31万円などの到達目標水準も設定した。

こう着状態となった交渉を打開するため、回答日の2日前には、月例賃金についてはストライキを回避する基準となる歯止めを「水準改善額500円」とし、賃金制度の補正や賃金カーブの是正などといった「賃金体系是正分等」を含めて1,000円を確保する方針に切り替えた。さらに、目標水準を相当程度上回っている組合には、賃金体系是正分による1,000円の回答も容認し、スト回避基準も賃金体系是正分500円とした。

中村委員長はこうした07年春闘の結果について、「回答内容については、中闘組合の大半が実質的に1,000円相当の賃金改善を図ることができ、賃金の市場価値や賃金決定における相場性など、『賃金の社会性』という観点からも評価できる」などと強調した。その一方で、「闘争終盤における戦術転換は、拡大中闘組合や地闘組合(中堅・中小労組)にとってわかりづらい面があったことも否めず今後の課題として残った」などと指摘。「職種別賃金要求方式の進化や統一闘争のあり方について、今後も組織内論議を深めていく」との考えを示した。

エントリー制や目標水準のあり方が課題に

大会で確認した「2007年総合労働条件改善闘争の評価と課題」によると、上述の2銘柄からの選択(エントリー)制については、大手16組合のうち12組合が開発設計職を選択するなどの偏りがあるうえ、代表銘柄を大手の実態を踏まえたレベルにしたことから、製品組立職の多い中堅・中小労組との実態の乖離が否めない。

また、ヤマ場で賃金改善の要素に位置づけた「賃金体系是正分等」に関しては、「例えば、賃金体系の歪みを補正する是正、補正原資や家族手当(家族手当に相当する手当も含む)等のことであり、こう位置づけることで実質的な賃金原資の投入を引き出し、それが賃金改善相場の形成につながった」と評価。「賃金改善=何でもあり」ではなく、賃金項目の一定の範囲内に収めるべきとの考えを強調した。

中村委員長は総括答弁で、「07年春闘で多くの課題がでた。とりわけエントリー制や基幹労働者の目標水準のあり方、産業内の格差是正などが喫緊の課題だ」として、早急な検討の必要性を訴えた。

ワーク・ライフ・バランス5カ年計画を策定

大会では「ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた電機連合の取り組み」を確認した。ワーク・ライフ・バランスを「既婚・独身や性別、年齢、組合員であるなしに関わらず全ての働く人に関わるもので、育児・介護等と仕事の両立だけでなく、家庭生活全般や自己実現、地域活動も含めた生活全般と仕事とのバランスを考えること」と定義付け、その実現に向けた2007~2011年度の行動計画をまとめている。労働時間短縮や次世代育成などの両立支援、キャリア開発支援、社会・地域貢献の各項目に関する制度の整備と、制度を利用しやすい職場の風土づくりに取り組む。

なかでも時短については、総実労働時間短縮に向けた「到達目標水準」を設定。05年度で総実労働時間(組合員平均)2062.9時間、時間外労働289.4時間、年休14.9日となっている現状を段階的に改善させ、最終年度には時間外150時間以下、休日取得20日以上を達成して総実労働時間1,800時間台をめざすとしている。

比例区は「民主党」で

なお、大会では、ヤマハ出身の組織内議員である若林ひでき氏(民主党・比例区選出)が二期目の立候補を断念することも報告された。大会初日の議事日程終了後、臨時中央選挙対策委員会を開いて今後の対応を協議した結果、比例代表区での新たな組織内候補の擁立や他候補の推薦には準備・活動期間が足りないとして「比例区では政党名『民主党』での投票行動を徹底する」ことを決めた。