時給千円で収入2兆1857億円増/労働総研、最賃引き上げ効果試算

(調査・解析部)

[労使]

最低賃金を全国一律で時給1,000円にすれば、賃金の支払い総額は2兆1,857億円増え、国内生産額も2兆6,424億円拡大する――。労働運動総合研究所(代表理事・牧野富夫日本大学教授)は26日、最低賃金引き上げの経済波及効果の試算を発表した。同総研では、低所得者は高所得者に比べ、増えた収入を消費に回す傾向が強いうえに、消費増の誘発効果は中小企業分野に強くあらわれるため、最低賃金の引き上げは高所得層への賃上げより内需拡大が期待できるとしている。

現在、地域別最低賃金は全国平均で時給673円。最も高い東京で719円となっている。時給1,000円は、「フルタイマーの年間平均労働時間2,000時間でやっと手のとどく、最低限の生活を保障しうるギリギリの水準」(同総研)で、07年春闘では連合、全労連ともに要求の柱に掲げている。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査や全国消費実態調査などを用いた試算によると、全国の地域別最低賃金が一律1,000円に上がった場合、パート労働者(1日6時間労働で月20日働くと仮定)の77.9%(調査対象480万人のうち374万人)が月額2万5,000円弱、一般労働者(1日8時間労働で月22日働くと仮定)の13.6%(同2,272万人中309万人)が同2万9,000円弱の賃金改善を享受できる。そして、この結果、賃金の支払い総額は年間で2兆1,857億円増え、このうち1兆3,230億円が消費支出に回り、各産業に波及して国内生産額を2兆6,424億円拡大させるという。

また、試算では低所得者層と高所得者層(年収1,500~2,000万円層と2,000万円以上層)の所得増の影響も推計している。それをみると、仮に高所得者層の収入を最低賃金の引き上げと同額分増やしても、消費支出の増加は7,545億円に過ぎず、低所得者層の賃上げの方が5,685億円多く消費へ波及すると試算。これは、高所得者層が収入の増加分を貯蓄などに回す傾向があるのに対し、低所得層は消費に回す傾向が強いためで、これを生産部門別にみると、低所得者の賃金増は、教育や食料品、繊維、自動車などに回ることが予想されるという。

同総研では、「最低賃金の引き上げで中小企業の生産コスト増を心配する声があるが、消費の成果を受け取るのは主に中小企業。中小企業は、積極経営の立場に立ち、当面の苦しさはあったとしても、最賃引き上げに賛同し、労働者と力を合わせて取り引き単価の引き上げなどを求めていくべきだ」と話している。