実質的な有額回答を強調/基幹労連

(調査・解析部)

[労使]

鉄鋼、造船重機、非鉄金属の労組で構成する基幹労連の06年春闘は、組合側の賃金改善3,000円(2年間)の要求に対し、経営側は具体的な金額の提示を見送り、「今後、新規財源を投入して賃金改善を実施する」ことを確約し、決着した。

基幹労連は今春闘から3業種部門が賃金交渉を2年ごとに行う交渉パターンにそろって移行した。賃上げの考え方を、「人への投資は労務費コスト増を遙かに凌ぐ利益をもたらす」と整理。その手法についても、従来のベアだけでなく、賃金カーブの歪みの是正や特定階層に傾斜した水準の引き上げ、財源の全額を仕事給に配分することなどにも広げた「賃金改善」の考え方をいち早く打ち出し、06年春闘全体の月例賃金の改善要求の流れを作りあげた。

だが、交渉に入ると、経営側は「これまでの協力・努力には感謝する」としながらも、月例賃金の改善には「固定的・構造的コスト増には特に慎重に」「賃金底上げは極めて疑問」などの主張を繰り返して強硬に抵抗。要求時のムードは急速に冷え込んでいった。

交渉終盤の総決起集会では、「このままでは良好な労使関係が壊れてしまう」と訴え、経営側に翻意を促してきた。最終的に経営側は、賃金水準や賃金制度・運用などの個別企業の課題に対して新たな財源を投入することには理解を示し、その内容や金額などについては今後、個々の労使間で協議することとした。

交渉がここまで難航した背景には、鉄鋼部門などの一時金が「業績連動方式を取り入れた時には、誰も予想しなかった水準になっており、賃金が製造業平均より低いとの主張が『年収ベースでみれば決して低くない』と跳ね返されてしまった」(宮園哲郎委員長)ことが大きい。一時金は史上最高業績を更新する鉄鋼大手が215~256万円の水準の見通し。造船重機大手も住友重機械工業が満額回答するなど、三井造船を除いて引き上げられている。

加えて、鉄鋼部門では、鋼材価格の値上げ交渉中のなか、ユーザーである自動車などの大手メーカーを超えるような金額の提示は避けたいとの配慮も少なからずあったようだ。

宮園委員長は、「賃金改善は遅くとも来年4月までには各社で実施される。新規財源の投入も確約されている」と強調。個人的見解と前置きしつつ「賃金改善は、1,000円以上の財源投入になると確信している」と述べ、実質的な有額回答であることを強調した。