2,000円の統一賃上げ要求を確認/電機連合

(調査・解析部)

[労使]

電機や情報通信機器メーカーの労組で構成する電機連合(中村正武代表・副委員長)は1月26日から2日間、横浜市で中央委員会を開き、基幹労働者の賃金水準改善額を月額2,000円とする統一要求を盛り込んだ06年春闘方針を決めた。年間一時金は5カ月を中心に要求する。中村代表は「経営側は厳しい姿勢で挑んでくるものと想定されるが、電機産業が今後とも発展し続けるためには人への投資と魅力ある労働条件が必要不可欠だ」と訴えた。

5年ぶりに統一要求を決定

電機連合の賃上げ要求は、賃金体系の維持(定期昇給)を図ったうえで、「35歳技能職基幹労働者」と「30歳技術職基幹労働者」という2つの職種銘柄で月額2,000円の賃金改善を求めるもの。傘下労組はどちらかのモデル賃金を選択することになる。

前回、賃上げを統一要求した2001年の春闘では、2,000円の賃上げ要求に対し、500円の回答を得た。今回の統一賃上げ要求はそれ以来、5年ぶりとなる。組合側はこの4年間、事業構造改革や人事制度の確立に協力してきたことが業績回復や財務体質の改善に結びついているとの思いが強い。

中村代表はあいさつで、「景気回復や企業業績の向上が、働くものへの配分に結び付いていない」などと指摘。そのうえで、 (1) 物価が06年にはプラスに転じる見込みにある (2) 06年度のGDP成長率が政府見通し2%程度で、雇用環境も有効求人倍率も1.0台回復を目前にしている (3) 電機産業で働く技能職の平均賃金が2000年と比較して約3%低下している (4) 企業業績は全体的には直近のピークである01年3月期実績まで回復している――などの根拠を示し、これらを「総合的に勘案して、5年振りに賃金改善要求を行うことにした」と述べた。

一方、一時金の要求水準は昨年と同じ。主要組合のうち一時金を交渉方式で決める7組合が年間5カ月を中心に要求。業績連動方式を採用している大手10組合との連携強化を図る。産別ミニマム基準は4カ月に設定する。中村代表は「直近の一時金の推移をみると、(主要の)17中闘組合の01年との対比では、金額で90%強、月数で90%弱の水準だ」と指摘。「産業・企業業績の回復を反映した改善の取り組みが必要だ」と訴えた。

三洋電機労組が統一闘争から離脱

中央委員会では、三洋電機労組が業績悪化を理由に今春闘の統一交渉に加わらないことも確認した。電機の春闘は、日立製作所や松下電器産業など主要17組合がスト権を電機連合に委譲。賃上げ要求の額を揃え、横並びで交渉する形を取っている。今年は経営不振が続くパイオニア労組と三洋電機労組の対応に注目が集まっていた。パイオニア労組は電機連合の統一要求にもとづいた賃上げ要求で足並みを揃えることにしたが、三洋電機労組は戦線離脱を決定。今春闘は16組合で交渉することになった。電機メーカーの主要組合が統一闘争から離脱するのは初めて。

不妊治療休暇も要求

賃金・一時金以外では、次世代育成や仕事と家庭の両立を支援する施策として、不妊治療のための休暇・休職制度の確立を求める。電機連合によると、不妊治療を受けている人は2003年の推計で約46万人、治療期間は平均3~4カ月かかるといるという。「(子を望む人の)経済的・時間的な問題の一助になればと思い、この休暇・休職制度をしっかり要求していくことにした」(中村代表)。

具体的には、企業がボランティアなどの目的で設定している多目的休暇・積立休暇を不妊治療でも利用可能な形に労働協約改定を要求する試み。多目的休暇・積立休暇のない組合は、不妊治療も取得理由に含めた休暇を制度化する。また、配偶者出産時に5日間の休暇を付与する要求も掲げた。

このほか、労働協約の改定では、組合員範囲の見直しと組織化にも取り組む。電機連合では「(組織人員が)1994年の86万人をピークに現在は61万人となり、この10年間で約25万人減少している。2010年までに何としても75万人まで回復させることを目標としている」(中村代表)。このため、部下なし管理職や専門職など、人事に直接の権限を持つ管理職や使用者側の機密に接する労働者以外の従業員を組合員の対象と捉え、組合員化を図る方針。併せて、パートタイマーや有期契約社員などの非典型雇用労働者の組織化も進める。