連合の公開質問状に回答/日本経団連

(調査・解析部)

[労使]

日本経団連は連合との首脳懇談会の席上、春闘をめぐる連合の公開質問状に口頭で回答した。近年の労働分配率の低下傾向を「正常な水準に至る過程だ」などと主張している。

5つの論点

公開質問状は昨年12月27日に出されたもの。 (1) 経労委報告で「生産性三原則」の堅持を主張しているにもかかわらず、「適正な成果配分」がなされてこなかった事実をどう捉えているか (2) 日本経団連が提唱する「雇用のポートフォリオ」による雇用・就労形態の最適組み合わせでは、所得の二極化が止まらず、社会システムの根幹にも影響しかねないのではないか (3) 現場力の維持・強化には公正な取引関係の実現が必要ではないか (4) 雇用リストラによる社員の長時間労働が増加するなか、仕事と家庭生活の両立支援をどうすべきか (5) 公務員制度改革の推進には、労働基本権の回復が必要ではないか──など、06年春闘に関する5つの論点について、日本経団連の認識を尋ねている。

労働分配率の低下は「正常な水準に至る過程」

質問に対する回答は懇談会の席上、日本経団連の矢野弘典専務理事が口頭で行った。まず、公正な分配などを内容とする生産性三原則について、「その重要性は十分認識している」としながらも「近年の労働分配率の低下傾向は、正常な水準に至る過程にあると理解すべきだ」として分配率低下の妥当性を強調。雇用の多様化に関しては「さまざまな就業形態で働く人のニーズに応え、個々の従業員が持つ多様な能力を最大限、発揮してもらうことが目的であり、所得の二極化を狙ったものではない」と訴えた。

ワーク・ライフ・バランスと現場力の問題では「企業にとっての重要課題だ」と述べて、その必要性を改めて主張。公務員改革については「真に公務員が担当すべき業務・サービスを明らかにして、それ以外は民間に移管することが大事だし、公務員が担うべき領域では労働基本権に一定の制約を課すことに合理性がある。時代や環境が変化して、その合理性の判断に変更を迫られ、あり方を検討することもあろう」との見解を示した。

両団体は、「今後も公開質問状の内容で深堀りした議論を続ける」(連合・古賀伸明事務局長)考え。なお、連合は12月27日、日本商工会議所と中小企業団体中央会にも公開質問状を手渡しているが、「回答を得られるか否かは現段階ではまだわからない」(古賀事務局長)という。