地域給与の導入阻止に向け総力/自治労の定期大会

(調査・解析部)

[労使]

自治労(約94万人)は23日から4日間、鹿児島市内で定期大会を開催し、向こう2年間の運動方針を決めた。方針は、人事院が2005年人事院勧告に盛り込んだ地域給与の導入について、地方公務員給与の引き下げにつながるとして、導入阻止に向けて総力をあげて取り組むとしている。役員選挙では、人見一夫委員長が退任し、福岡県本部出身の岡部謙治氏が新委員長に就任した。

新運動方針は、8月15日発表の「2005年人事院勧告」で打ち出された国家公務員への地域給与の導入について、「地方公務員給与の引き下げ、地方交付税の削減を企図する財務省の政策に追随するもの」とし、導入阻止に向けて組織の総力をあげて取り組むとしている。今後の具体的な取り組みとしては、各都道府県の人事委員会が追随することなく独自の判断で対応するよう、総務省、自治体や人事委員会との交渉を強化する構えだ。

地域給与の導入は、地方の公務員賃金が民間に比べ高いことを理由として俸給表の水準を平均4.8%引き下げ、その結果、民間よりも低くなった部分については新設する「地域手当」(3%~最大18%)で補うという措置。自治労では、地方公務員も国家公務員準拠で俸給表引き下げが行われれば、「都市部以外ではすべて賃金ダウンになる」(植本眞砂子書記長)として、危機感を募らせている。人見委員長はあいさつの中で「公共サービスの役割や労働者の賃金・労働条件のあり方を議論することなく一方的に引き下げることは到底許すことはできない」と強調した。

また、運動方針は、地方公共サービスに従事する労働者すべてを対象とした自治体最低賃金制度の確立を打ち出した。さらに、入札の際のダンピング防止や公正な労働基準の確保を確立するため、すべての自治体で2007年度までに公契約条例を制定することをめざし、労使協議や議会対策に取り組むとした。

一方、平和運動では、憲法の積極的平和主義の現実化に向けて、「個別的自衛権」の取り扱いなどを明確にした「平和基本法」(仮称)の制定を盛り込んだ。しかし、大会では、会場前で反対演説をした沖縄県本部をはじめ、多くの県本部が中央本部に対して反対意見をぶつけた。沖縄県本部は討論の中で「(法制定は)再軍備を容認し、国際貢献と言って海外派兵を認めるものだ」と主張。また、憲法前文と第9条1項、2項の堅持と現在の自衛隊の違憲の確認を中央本部に対して求める意見が、他の本部からも相次いだ。宮城、新潟、富山、沖縄県本部は当初、運動方針の修正案を提出したが、中央本部の「憲法死守」などの答弁を受け、取り下げた。

都市公、全水道と協議している産別統合については、来年1月に予定していた中央委員会を臨時大会に変更し、統合の基本的方向性を確定させた上で、2006年3月の連合体発足に向けた準備会を設置するスケジュールを確認した。また、全国一般との統合については、2006年1月1日をもって組織統合することを確認した。統合後の組織名称は現在と変わらず「自治労」で、「全国一般評議会」が組織内に設定される予定だ。

役員選挙では波乱の展開となったが、最終的に、前副委員長の岡部謙治氏(福岡県本部)の委員長選出で落着した。大会前の立候補締め切り時点では、人見現委員長と岡山県本部出身で連合岡山会長の森本栄氏が委員長に立候補し、大会の中でも選挙管理委員会から正式に候補者名の報告があったことから、投票に持ち込まれると思われていた。岡部氏は当初は副委員長に再立候補していた。

しかし、報告後、人見、森本の両氏が立候補を降りることになった。両氏の立候補が路線対立ではないことから、組織内の混乱を避けるため、調整が進められた結果の措置だったとみられる。代わって、岡部氏が改めて委員長に立候補し直し、信任されることになった。なお、書記長には、北海道本部出身で前書記次長の金田文夫氏が選ばれた。