05春闘テーマに労使トップが意見交換/日本経団連・連合

(調査・解析部)

[労使]

日本経団連(奥田碩会長)と連合(笹森清会長)は18日、東京・大手町の経団連会館で今春の労使交渉を主なテーマとした懇談会を開いた。横並びのベアはできないと主張する日本経団連に対して、連合は家計への所得移転が不十分だと主張し、賃上げの余地はあるなどと反論した。

日本経団連の柴田昌治日本ガイシ会長(経営労働政策委員会委員長)が、昨年12月に発表した「経営労働政策委員会報告」の考え方を説明。柴田会長は今春の交渉を取り巻く環境について、為替や原油価格、米経済などこのさきの不安要素はあったとしても、従業員の協力による守りのリストラで企業業績が改善していることは事実だと述べた。

しかし、賃上げについては、「中長期的にみればわが国の賃金水準は世界のトップレベルにあり、一律にあげるという状況ではないし、横並びでのベアはできない。個別に賃上げする企業もあれば雇用や企業存続のために賃下げする企業もあるかもしれない。今回の経労委報告では個別労使が十分話し合って決めるべきだと主張している」と説明。「闘うという字を使った春闘は終わったと認識している。社会保障などについて労使が真剣に話し合うことが重要だ」などと強調した。

また、日本経団連の他の経営トップは「連合白書にはまだ企業が従業員から収奪するとの考えがみられるが、従業員との協力があってこそ企業の発展がある。ただ、余裕があるところが従業員に支払うことができるということを理解してほしい。トップランナーが走って後続がそれを追いかけることによって全体のレベルアップにつながることもある」などと発言した。

それに対し連合側は、「家計への所得移転が不均等であることを経営側も認識してほしい」「マクロ経済の成長に対して賃金水準は伸びていない。賃上げの余地は十分ある」などと発言。このほか、不払い残業に対して労使が共同して改めて取り組んでいくことや、親会社からの不当な単価切り下げなど取引慣行の是正などを求めた。

懇談の終わりに奥田会長は、取引慣行の是正については「もし悪意があってやっているなら大問題で、実態がわかれば連合からぜひ申し出てほしい」と要請した。笹森会長は、税制を含めた社会保障の一体改革にはぜひ日本経団連の協力が必要だと強調。春闘については「なくならないし、続けるべき。労組には団結権、団体交渉権があり、闘いを捨てることはできない」と反論。ただ、労使協議のウェートが高まることは否定しないとし、「どうしようもない経営者がいる場合もあり、こういうときには労使対立せざるを得ないことがあることを理解してほしい」と述べた。