政策課題で労使トップが協議/連合・日本経団連が首脳懇談会

(調査・解析部)

[労使]

連合(笹森清会長)と日本経団連(奥田碩会長)は14日、東京・大手町の経団連会館で首脳懇談会を開き、労働時間管理や若年、パート、外国人労働者の雇用問題などを中心に話し合った。社会保障改革などの課題に対しては、労使が協力して取り組んでいくことで意見が一致した。

冒頭、あいさつした笹森会長は景気の現状について、「中央・地方間、企業規模間の格差が拡大し、二極化が進んでいることに加え、格差拡大を助長させる施策が行われている」と指摘。連合が求める社会保障制度の一体的な見直しに関しても「どうも政府が乗り気薄ではないか。国民最大の関心事であり、なんとしても(改革を)成し遂げなければならない」と述べ、政府の姿勢に疑問を呈するとともに、労使が共同歩調を取るべきだと強調した。

一方、奥田会長は、「景気は順調に回復してきたものの、今は“踊り場”の状態にある」との認識を示した上で「企業規模というよりも、地域間格差が顕著になりつつある。多方面から(対策を考えなければ)改善していかないのではないか」と主張した。若年雇用問題についても触れ、「失業やフリーターなど大問題。もっと若者に活気があってよいはずだが、それがないのは日本の将来への不安や国全体への不信感が根底にあるのではないか」と語った。

それぞれの副会長などを交えた懇談では、労働時間管理などを巡る諸課題について互いの主張をぶつけ合った。連合が「1800時間が国家目標から消えてしまったが、今の平均労働時間(1853時間)は短時間労働者も含めたもの。実際に働いている人たちは有給等の休暇を取ることが難しくなっているし、残業も多い」「11月に実施した相談ダイヤルでは、寄せられた相談の9割が不払い残業問題だった」などと発言。経営側にサービス残業解消の対応を求めたのに対し、経団連側は「仕事の成果が必ずしも労働時間と比例しない仕事もあり、そういう意味ではホワイトカラーエグゼンプションを導入するなど、時間管理に馴染まない仕事について労使で話し合っていくべき」、「最近、監督官庁が指針や通達を根拠にむやみに指導に入ることが顕著であり、考え直すべきだ」などの見解を示した。

このほか、連合からは「(連合のアンケート調査で)非典型労働者は時給800円未満が全体の4割を占めている。残業をしたり、正社員とほぼ同じ仕事をしている人が半数もいる。均等待遇の社会ルール化や雇用の安定確保の観点から、有期雇用契約の改善を行っていく必要がある」「賃金や労働時間等の労働条件の日本人と同等の待遇、労働保険の適用などにより、外国人労働者の人権を尊重する必要がある」などの意見が出された。

若年層の雇用問題については、 (1) 勤労観・職業間を育成するため、教育現場への講師派遣や若者の仕事探しの支援など企業や組合が抱える人材を有効活用する (2) 技術・技能のノウハウ継承のために、若年者の積極的な採用と企業内外における訓練・育成が必要であり、政府の助成を強化させる必要がある (3) 若年者の雇用問題について労使共同宣言を公表し、社会全体に対するメッセージを出していく――などの具体策を提示し、経営側に理解と協力を求めた。

経団連側からは「正社員とパートに任せる仕事をきちんと整理し、長期雇用と非典型労働の整合をとって行かねばならない」「競争力の源は人材であり、現場力の復活が不可欠。コンピュータやITでは計り知れない“暗黙知”というものを取り戻すために、経営者として取り組んで行かねばならない」などの発言があった。外国人労働者問題については、奥田会長が持論を展開。「外国人の力を借りることを現実のものとする時代は必ず来るだろう。今から用意しておかねばならない」と発言した。

なお、懇談会では笹森会長が公務員制度改革に言及。「公務員制度改革問題でOECDが韓国に査察に行く。その結果、勧告が出されれば、OECD加盟国の中で日本だけが公務員に対して基本権がないということになる。それは許されないことだと理解してもらいたい」と訴えたが、経団連側は「先般、(公務員制度の)改革案が出されたが、『これではだめ。我々自らがしっかりとした提言をしていきたい』との考えから委員会を設置した」と説明するにとどまった。