労働団体の福祉センターがホテル譲渡/売り上げ減で行き詰まる

(調査・解析部)

[労使]

(財)中央労働福祉センター(衛藤辨一郎理事長)は6日、都内で記者会見し、同財団が所有・運営している「ホテルラングウッド」と「池之端文化センター」の事業を(株)ジェイ・ウィル・パートナーズ社に譲渡する基本合意書を締結したことを発表した。事業譲渡は11月末を予定。譲渡後は、ジェイ・ウィル・パートナーズ社が運営管理する事業再生ファンドで資産を所有し、(株)グリーン・ホテル・マネジメント社が両事業を引き継ぐ。両事業所に勤める従業員約180人の雇用も基本的に継続されるが、同センターは解散の手続きに入る。

中央労働福祉センターは、労働者福祉を目的に旧労働4団体(総評、全労、新産別、中立労連)により、1962年に設立された。69年に収益事業の一環として池之端文化センターを開業。さらに88年には、荒川区の日暮里地域開発のコンペに参加し、新規事業としてホテルラングウッドを開業した。

当時はバブル期でホテル建設に膨大な建設資金を要したことから、池之端文化センターの不動産を担保に金融機関から95億円を借り入れたが、バブル景気の崩壊に伴う担保評価の下落などで経営が逼迫。多額の債務返済を余儀なくされ続けてきた。

売上高についても93年の103億円をピークに、それ以降は毎年7億円強の売り上げ減が続くなど低迷の一途を辿った。99年度には売上高52億円と、ピーク時の半分に落ち込んだ。95~99年度までの5年間に約43億円の赤字を計上している。

2000年度には経営再建3カ年計画を策定。連合から13億円の資金支援を受けたものの経営は好転せず、00年度は経常赤字が5000万円、累積欠損金は16億円に達し、借入金残高も95億円にのぼった。

その後、連合や中央労働金庫などの支援の下で、従業員の定期昇給の凍結や賞与の見直しを実施。業務委託の自営化などの経費削減を徹底し、実質経常利益を01年度から3年連続で黒字化させたものの、売上の減少に歯止めを掛けることはできず、借入金は今年9月末現在で92億円。連合の担保預金も12億2500万円が残っている。

こうした中、債権組織の一つである東京三菱銀行が(株)整理回収機構に債権(RCC)を委譲。RCCは同センターに「3年以内の債務全額返済」か「6,7年程度で債務返済が可能になる返済計画の提出」を求めてきた。同センターは、「事業と雇用を継承できる最善の方策は両事業を第三者に譲渡することだ」と判断。雇用確保等の条件を満たした投資運営会社ジェイ・ウィル・パートナーズに事業譲渡することを決めた。

経営移転後も当面、事業所の名称や事業内容は同じ。同センターと雇用関係にある正社員やパートタイマーなどの従業員も、本人が退職を希望しない限り、新会社に再雇用されることになる。衛藤理事長は、「希望退職を募ることなく、事業を継承できることが最もありがたい」などと話している。

なお、連合は6日の中央委員会で預託金の放棄を確認。12億2500万円の担保預金は、同センターの借入金返済に充当されることになる。