パートに時間外割増賃金、法定時間内でも支給を/厚労省検討会議

(2004年5月28日 調査・解析部)

[行政]

厚生労働省の「仕事と生活の調和に関する検討会議」(座長=諏訪康雄・法政大学教授)は26日、6月末に発表予定の報告書案を明らかにし、パート労働者に対して、「法定労働時間内でも所定内を超える場合は、割増賃金を義務化すること」「割増率は通常労働者より高く設定すること」──などを提起した。

同会議は、労働基準局長の私的研究会。昨年10月から10回にわたり、仕事と生活をめぐる状況変化を踏まえたうえでの、バランスの取れた働き方の方向性などについて議論してきた。

同日、発表された報告書案は、多様な働き方が受容される環境づくりに向けて、「労働時間」「就業場所」「所得の確保」「均衡処遇」「キャリア形成・展開」──の5つの柱を設定。報告書案はまず、国民の意識が「ものの豊かさ」から「心の豊かさ」を求める方向にシフトするなか、経営側から提示される雇用管理の改革は正社員と非正社員の二極化が前提で、労働組合の交渉力低下もあって、多様化は進まず、勤労者は「不安感」を募らせていると指摘している。

今後は、個々の働く者が仕事と生活をさまざまに組み合わせ、調和のとれた働き方を安心・納得して選択できる環境を整備していく必要があると強調。多様な働き方が受容され、自律的な働き方の選択を制約している雇用管理などの制度や慣行の見直しを求めている。

「労働時間」の面では、パート労働者に対して、 (1) 法定労働時間内でも所定時間を超えて労働させる場合には、割増賃金の支払いを義務化すること (2) 義務化にあたっては、短時間労働者の割増率を通常労働者より高く設定すること──など提案。一方、研究開発など高度な仕事に携わるものに対しては、過重労働などを防止する措置を実施しつつ、自主的な労働時間管理を可能にする弾力的な労働時間制度(変形労働時間制、裁量労働制、フレックスタイムなど)の活用を提言している。

また、「所得の確保」関連で最低賃金制度について、 (1) セーフティネットとしての機能が十分発揮されるよう、所定労働時間がとくに短い者に係る適用除外規定を削除すること (2) 産業別最低賃金の廃止は慎重な検討が必要──などの意見などを盛り込んだ。

「均衡処遇」面では、処遇の差が認められる合理的理由を整理し、判断基準を明確化したうえで、均衡処遇の実現について法令上明確にする必要があると明記した。

同研究会は、6月下旬をメドに最終報告をまとめる予定だ。