新日鉄、三菱重工労組などが要求提出/基幹労連

(調査・解析部)

[労使]

鉄鋼労連、造船重機労連、非鉄連合が昨年9月、組織統合して発足した基幹労連(組合員約25万人)は10日、東京都内で中央委員会を開き、この春の労使交渉に臨む「AP(アクションプラン)04春季取り組み方針」を確認、傘下の組合は12日一斉に要求提出した。統合後、初の春闘となったが、ベアの統一要求は断念。鉄鋼部門ではその代わり、他産業に比べて落ち込んでいる鉄鋼産業の賃金を2010年をめどに、製造業平均へ改善させるための道筋を明らかにするよう、経営側に求めた。

中央委員会であいさつした宮園委員長はベア要求見送りについて、「現下の産業・企業の状況等を踏まえ、基幹労連としての統一的な要求を見送ることとした。これは、経営側総体の主張である『ベア不要論』『ベア否定論』を容認したものではけっしてない」と強調。鉄鋼部門が中期的な賃金水準改善を求めることについては、「納得しうる結果を出さない限り、新たな視点に立った取り組みが活きてこないばかりか、基幹労連全体の今後の労働条件決定にも足かせとなりかねない」と主張し、経営側に対して格差改善に向けた具体的な道筋を示すよう強く求めた。

鉄鋼部門では、新日鉄とJFEスチールが業績好調なものの、財務体質が疲弊している企業があることを考慮し、ベア要求を断念。これにより、2年に一度賃上げ交渉する「複数年協定」を採用している鉄鋼部門では、自動的に05年のベアゼロも確定。2年前もベア要求を見送っているため、4年連続「ベアなし」となる。定昇は、各社3,700円(35歳標準労働者ポイント)の制度が大手各社の労使で確認済みだ。

経営側には、鉄鋼産業の基本賃金について2010年を目途に、新たな財源投入によって製造業平均まで回復させる道筋を明らかにするよう求めた。基幹労連によると、製造業平均(規模1,000人以上)と鉄鋼大手4社の平均(35歳標準労働者)では、約1万円の格差がある。2010年を目途とするのは、その頃がちょうど団塊の世代が定年退職する時期であり、高技術・技能な人材を確保し、産業の競争力を強化させるためには、他産業から見劣りする労働条件を是正する必要があるとの考えからだ。

一時金は、必ず確保すべき部分として位置づける「生活基礎部分」を120万円とし、その上にそれぞれの組合が0~40万円の範囲で「成果還元部分」を設定した水準を要求するが、新日鉄、JFEスチール、神戸製鋼は業績連動方式に移行しているため、交渉するのは住友金属工業だけ。同労組は今回、03年妥結額を40万円上回る150万円を要求した。

一方、造船重機械部門のベア要求見送りは2年連続。定昇は約6,000円(組合員平均)の制度が確立している。一時金は統一して「50万円3.5カ月」(おおむね163万円)を要求したが、業績好調な三菱重工だけは要求を上乗せし、「56万円+3.5カ月」を要求した。