3年連続でベア要求見送り/電機連合

(調査・解析部)

[労使]

電機連合(組合員、65万2,000人)は29、30の両日、横浜市で中央委員会を開き、昨年に引き続きベア要求を見送り、「賃金体系維持」を求める今春闘方針を正式に決めた。ベア要求見送りはこれで3年連続。

電機連合の古賀伸明委員長はあいさつで、実質賃金や産業・企業業績などの項目を総合的に勘案した結果、ベア要求する環境にはないと判断したと説明したうえで、「回復の兆しが出てきた日本経済をどう自律的な成長軌道に乗せていくのか、動き始めた民需を国民の生活と雇用の改善に直結させ、地域社会を活性化させる生活主導型の循環へどうつなげていくのかという経済・財政政策が求められており、それを底支えする賃金体系維持をはかり、現行の個別賃金水準を確保していく取り組みを推進する」と強調した。

賃金体系維持の取り組みでは、各組合が業種や自社の労務構成を勘案したうえで、要求ポイントとして「35歳技能職基幹労働者」「30歳事務技術職基幹労働者」のいずれかを選択。選択したポイント賃金の水準を前年よりも下げないことを経営側に求める。年間一時金については、産別ミニマム基準を4カ月とし、5カ月を中心に各組合は要求を組み立てる。ただ、大手17組合のうち10組合は、業績に応じて4~6カ月の範囲で自動的に水準が決まる「業績連動方式」を採用しているため、実際に一時金の交渉をするのは7組合となる。

2年連続でベアを獲得してきた18歳産業別最低賃金(企業内最低賃金)は、今年は要求しない。ベア獲得によって水準がここ2年だけで1,500円引き上がり、他産業の水準を上回るとともに、19歳ポイントの水準に接近してきたことが主な理由だ。

今年は労働協約の改定年にあたる。そのため協約改定項目として、次世代育成支援対策推進法への対応に関して要求する。同法は、従業員が300人を超える企業に対して、05年3月末までに社員が仕事と子育ての両立を図ることができるようにするための「行動計画」の策定を義務づけるもの。交渉では、策定までに労使が同計画の内容などについて話し合う場の設置を求める。

仕事と育児の両立支援ではまた、配偶者が出産する際の組合員(男性)の休暇日数を5日間に延長するよう求める。同休暇はほとんどの大手組合が2~3日で、5日間の制度をもっているのはパイオニアのみとなっている。

方針論議では、「一時金交渉では攻めに転じる。情勢では、前年の水準を下回る条件はまったくない」(日立)、「日本経済が回復し、インフレ局面に転じたときの統一要求のあり方についていまから論議しておく必要がある」(松下)などの意見が出た。