個別賃上げを積極的に検討-トヨタ労組の新方針

(調査・解析部)

[労使]

トヨタ自動車労働組合(東正元委員長)は4日、愛知県豊田市で定期大会を開き、今後の春闘での賃上げ要求方式について、「平均賃上げ方式」よりも「個別賃金方式」を前面に打ち出すことを視野に入れ、積極的に検討していくとする新運動方針を確認した。従来の春闘では、組合員一人平均の賃上げ額で要求する平均賃上げ方式が前提になっており、今年の春闘では6,500円を経営側に要求した。経営側には個別賃金方式でも併せて要求し、回答を受けているものの、個別賃金での回答は実質、参考程度にとどまっている。

トヨタ労組の要求方式の柱は平均賃上げ方式。今春闘では、賃金制度を維持するための原資である「賃金制度維持分」(6,500円)のみを経営側に要求し、満額を獲得している。個別賃金方式は、年齢、技能レベルや職種などを基準とした特定のポイントの賃金を絶対額でいくら引き上げるか、またはいくらをめざすのかなどを要求するもの。トヨタ労組は上部団体の産業別労組である自動車総連の方針にもとづき「35歳高卒、勤続17年、技能職四人世帯」を基準ポイントとして、個別賃金方式でも要求額を掲げ、経営側から回答も得ているが、平均賃上げ優先の交渉形態に変化はない。

新運動方針はこれからの賃金要求方式について、「これまで平均賃上げ方式と並列で取り組んできた個別賃金要求については、トヨタ労組として積極的に検討を推進」と提起。平均方式よりも個別方式の方を前面に出す「平均賃上げ・個別ポイント賃金の主客逆転」も視野に入れ、個別賃金を軸とした取り組みのあり方や、個別方式に向けた課題の洗い出しに取り組む、としている。ただ、来春闘からすぐ、個別方式を前面に立てて要求するとまでは、方針のなかでは踏み込んでいない。

個別方式をめぐっては、自動車総連の加藤裕治会長が先月開いた定期大会で、自動車産業で働く労働者の「労働の質」の高さをより経営側に対して主張しやすいとして、2005年をめどに仕事をベースとした代表銘柄による個別賃金交渉へ、メーカー組合全体で移行したいとの意向を示したばかり。