国内労働情報 17-03
労働組合法立法史料研究Ⅳ

平成29年3月31日

概要

研究の目的・趣旨

労働関係法令立法史料研究会(座長・渡辺章筑波大学名誉教授)はこれまでにJILPT国内労働情報として、2014年に『労働組合法立法史料研究』(条文史料篇)及び『労働組合法立法史料研究』(解題篇)、2016年に『労働組合法立法史料研究Ⅲ』の3冊を刊行してきた。その続編である本書『労働組合法立法史料研究Ⅳ』の刊行により、労働組合法立法にかかわる史料の整理・提供は完結となる。

『労働組合法立法史料研究Ⅳ』は、現行の昭和24年労働組合法(以下、「昭和24年法」という)にかかわる、起草関係史料と審議関係史料を収録している。昭和24年法の起草にあたっては、昭和20年労組法のときと異なり、政府において特別の審議会を設けて議論を進めたわけではなく、同年1月初頭に日本政府がGHQから手交された3つの勧告を出発点にして秘密裏に行われた。その後数次にわたり草案の起草およびGHQ関係者の意見表明などが行われたが、本書ではそれらに関する英文の起草関係史料を中心に収録している。法案作成の途中では、昭和20年法を基礎とした最小限の改正にとどめるというGHQの方針転換(いわゆる法案転換)があり、それまでの法案内容に大きな変更がもたらされた。本書に収録された史料によって、第12次案までにおよんだ法案形成の経過を原史料によってたどることができ、同法の立法過程および主要な問題所在を改めて学び、理解が深まることが期待される。

研究の概要

昭和24年法は、昭和24年5月22 日に国会で可決されて成立し、同年6月1日に公布された(同月10 日施行)。本書は、時系列を基本としながら、法案の起草および立法の過程に関する史料を6つの項目に分けている。まず、「Ⅰ GHQ勧告の原文」では、GHQの3つの勧告について、『労働組合法立法史料研究(条文史料篇)』に掲載した日本語訳の台本となった原文史料(英文)を掲載している。次に、「Ⅱ 日本側草案へのコメント」では、GHQの労働課員だったポール・ジャクソン(Paul D. Jackson)の名前が記されている2種の英文メモランダムを収録している。これらは、秘密裡に法案の起草作業を進めていた初期段階におけるGHQの関与を示すものであり、内容的に見て、日本側が先のGHQの3つの勧告の趣旨を汲んで作成した第3次案に対するコメントと思われ、重要な意味を有している。その後、昭和21年2月に「労働省試案」(第5次案)が公表され、公聴会が開催されたことは上記の本史料研究(解題篇)に記しているとおりである。

続いて、「Ⅲ 法案転換をめぐる史料」には、①第8次案の原文というべきGHQ作成の英文(3月28 日付)、②これに対する日本側からの英文による意見と質問(3月31 日付)、③これを受けてGHQが作成した第9 次案の原文(4月5日付)の3つを収録している。①と③は、昭和20年法の英訳を基礎としつつ、その相当部分を抹消線で削除し、代わりに新たな条文をタイプで追加している。また、①には、かなり多くの手書き修正や書込みも加えられている。

次の「Ⅳ 国会審議の準備史料」には、日本政府が国会審議の準備のために作った史料であり、労働組合法案の「逐条説明」(労働省労政局)と、同法案および労調法改正法案に関する「予想質疑」の2点を収録した(いずれも日本語)。「予想質疑」は「逐条説明」の倍を超える分量で規定ごとの趣旨説明に努めており、各規定の昭和20年労組法との関係とともに基本的趣旨が読み取れる内容である。

以上のような立法過程を辿るうえでの参考史料として、「Ⅴ 昭和20年労働組合法および24年労働組合法の翻訳」で、出発点となる昭和20年法の英語訳と、完成した昭和24年法の英語訳を収録した。最後に、「Ⅵ 昭和20年労働組合法関係の補遺」として、昭和20年法の立法にあたり労務法制審議委員会の中に設けられた「整理委員会」の、第1回会議(同年11 月11 日)の「記事」(手書きの議事メモ)を収録している。

政策への貢献

現代の労使関係法の課題は多様である。仮に、中小企業における労働者の組織化と交渉関係の構築と促進、非正規労働者・高齢者・ハンデイキャップをもつ労働者らに対する労働者の利益代表としての取組み方、団体交渉と労使協議の機能の重複と区分け、労基法等に規定されている「労使協定」への企業内多数組合の関与のあり方といった課題を想定した場合、本書は集団的労使関係法にかかわる問題点を的確に把握し、法解釈理論を検証する際の歴史的、基礎的な資料となる。

本文

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研究の区分

情報収集

調査期間

平成28年度

研究会メンバー

神吉 知郁子
立教大学法学部准教授
桑村 裕美子
東北大学大学院法学研究科准教授
竹内 (奥野)寿
早稲田大学法学学術院教授
土田 道夫
同志社大学法学部・法学研究科教授
富永 晃一
上智大学法学部准教授
中窪 裕也
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授
仁田 道夫
東京大学名誉教授
野川 忍
明治大学法科大学院教授
野田 進
九州大学名誉教授
細川 良
労働政策研究・研修機構研究員
和田 肇
名古屋大学大学院法学研究科教授
渡辺 章※
筑波大学名誉教授

※は研究会座長

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