メールマガジン労働情報 No.2068

■□――【メールマガジン労働情報/No.2068】

中小企業の賃上げ1万1,826円、4.35%アップ/経団連 ほか

―2025年6月25日発行――――――――――――――□■

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  本号の主な内容
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【行政】石綿労災保険給付1,139件、前年度よりやや減少/厚労省 ほか
【統計】4月実質賃金、前年同月比2.0%減で4カ月連続のマイナス/毎勤統計確報 ほか
【労使】中小企業の賃上げ1万1,826円、4.35%アップ/経団連 ほか
【動向】メンタル不調による経済的損失額、年間7.6兆円・GDP1.1%相当と推計/横浜市立大・産業医科大 ほか
【企業】事務作業を大幅に効率化、DX活用し業務改革/太陽生命 ほか
【海外】「政策の不確実性」により、世界経済成長率を2.9%に下方修正/OECD経済見通し2025 ほか
【イベント】労働講座「「年収の壁?」社会保険と労働保険を学ぼう」/神奈川県かながわ労働センター ほか

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【JILPTからのお知らせ】
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◇『日本労働研究雑誌』7月号を刊行しました!
特集「福利厚生の意義を問い直す」

本特集では福利厚生について、歴史的事実やエビデンスの検討といった実証的な観点、経済合理性や社会的正当
性といった理論的な観点など多面的に検討しています。数々の論考からは、使用者による国家への支払い代行や
使用者や国家による再分配のあり方における合理性の所在、今日の福利厚生や社会保障の体系の複雑さ、成立の
経路を考慮に入れながら、改めて考えるべき課題を浮かび上がらせます。
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2025/07/index.html

◇『ビジネス・レーバー・トレンド』7月号を公開しました!「賃上げは定着したか――2025春闘の最新状況」

昨年春闘で33年ぶりに実現した5%超の賃上げ、2025春闘でも2年連続5%台の達成が確実な情勢となっていま
す。本号では、労働組合による最新の回答集計を中心に、賃上げの全体状況や喫緊の課題となっている中小組合
の格差是正の取り組み、主要企業の回答一覧などを詳報します。
https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2025/07/index.html

◇英文ジャーナル『Japan Labor Issues』(電子版)2025年夏号を公開しました!

本号では、論文特集のIIIとして、「職場におけるAI技術導入後の労働環境の変化に関する日本の位置――企業
組織の対応に着目して」、「国際比較から見える日本のジョブの特徴」を紹介しています。また、超高齢社会
における介護支援施策の現状について、2024年改正育児・介護休業法および関連施策に関する解説を掲載。
その他、厚生労働省2024年「高齢者雇用状況等報告」を紹介しています。
https://www.jil.go.jp/english/jli/index.html

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【行政】
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●石綿労災保険給付1,139件、前年度よりやや減少/厚労省

厚生労働省は20日、2024年度の「石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況」の速報値を
公表した。労災保険給付の請求件数は1,529件(石綿肺を除く、前年度比224件・17.2%増)、支給決定件数は
1,139件(同31件・2.6%減)。死亡労働者の遺族のうち、時効(5年)により遺族補償給付を受けることが
できない遺族を対象とする「特別遺族給付金」の請求件数は378件(同61件・19.2%増)、支給決定件数は
240件(同81件・50.9%増)だった。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58868.html
▽別添資料
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/001107940.pdf

●中小企業の価格転嫁率52.4%に改善/中小企業庁調査

中小企業庁は20日、「価格交渉促進月間(2025年3月)のフォローアップ調査」結果を公表した。同庁は毎年
3月と9月を「価格交渉促進月間」に設定し、中小企業が原材料費・エネルギー価格・労務費等の上昇分を
発注側企業に適切に価格転嫁しやすい環境を整備するための取組を進めている。
価格転嫁率は昨年9月の前回調査から2.7ポイント増の52.4%。コストの増額分を一部でも転嫁できた企業の
割合が増加するなど改善がみられるものの、引き続き転嫁できない企業と二極分離の状態にあるとした。発注
側企業から申入れがあり価格交渉が行われた割合は、前回から3.2ポイント増の31.5%、価格交渉が行われた
企業のうち73.2%が「労務費についても価格交渉が実施された」と回答。労務費の転嫁率は48.6%で前回から
3.9ポイント増加したが、原材料費の転嫁率54.5%より5.9ポイント低い。
https://www.meti.go.jp/press/2025/06/20250620003/20250620003.html
(調査結果)
https://www.meti.go.jp/press/2025/06/20250620003/20250620003-1.pdf

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【統計】
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●4月実質賃金、前年同月比2.0%減で4カ月連続のマイナス/毎勤統計確報

厚生労働省は24日、2025年4月の「毎月勤労統計調査」結果(確報、事業所規模5人以上)を公表した。
現金給与総額は、就業形態計で前年同月比2.0%増の30万1,698円、うち一般労働者が同2.5%増の38万8,077
円、パートタイム労働者が同2.7%増の11万1,850円。一方、現金給与総額指数を消費者物価指数(持家の
帰属家賃を除く総合)で割った実質賃金は、前年同月比2.0%減で4カ月連続のマイナス。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/2504r/dl/pdf2504r.pdf
▽統計表等
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/2504r/2504r.html

●5月の消費者物価指数、前年比3.7%上昇/総務省

総務省は20日、2025年5月の全国消費者物価指数を公表した。生鮮食品を除く総合指数は111.4で前年同月比
3.7%の上昇。上昇幅は4月の3.5%を0.2ポイント上回り3カ月連続で拡大。前月比(季調値)は0.5%の上昇。
前年同月比で上昇が大きかったものは、「穀類」28.7%、「電気代」11.3%など。「穀類」のうるち米は
101.0%上昇で前年の2倍超。下落が大きかったものは、授業料等がマイナス9.5%、キャベツなど生鮮野菜
がマイナス4.7%だった。
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
▽報道資料
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

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【労使】
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●中小企業の賃上げ1万1,826円、4.35%アップ/経団連

経団連は20日、「2025年春季労使交渉・中小企業業種別回答状況」(第1回集計)を発表した。調査対象で
ある従業員500人未満の17業種754社のうち、回答が示されたのは17業種264社。うち平均金額が不明等の13社
を除く251社の賃上げ回答・妥結水準は、定期昇給等を含む加重平均で1万1,826円(前年同期1万420円)、
4.35%(同3.92%)のアップ。
https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/044.pdf

●相談受付件数、「パワハラ・嫌がらせ」が最多/連合「労働相談ダイヤル」(5月)

連合は19日、「なんでも労働相談ダイヤル」2025年5月分集計結果を発表した。受付件数は1,073件(前年同
月比122件減)。相談内容は、「パワハラ・嫌がらせ」18.6%が最多、次いで「雇用契約・就業規則」10.0%、
「解雇・退職強要・契約打切」8.1%、「退職手続」7.4%、など。業種別では「医療・福祉」23.0%が最多、
次いで「サービス業(他に分類されないもの)」21.4%、「製造業」12.0%など。
https://www.jtuc-rengo.or.jp/soudan/soudan_report/data/202505.pdf

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【動向】
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●メンタル不調による経済的損失額、年間7.6兆円・GDP1.1%相当と推計/横浜市立大・産業医科大

横浜市立大学と産業医科大学は13日、メンタル不調による経済的損失についての研究成果を公表した。出勤
しているにもかかわらず心身の不調により通常のパフォーマンスが発揮できない「プレゼンティーズム」に
よる損失額は約7.3兆円、病気やメンタル不調による欠勤「アブセンティーズム」は約 0.3兆円、合計でGDP
の1.1%に相当する約7.6兆円と推計した。メンタル不調の影響が社会全体の生産性に甚大な損失をもたらし
ていると指摘、単なる個人支援や医療の問題ではなく、経済政策や労働施策における重要課題としての対応
を訴えた。
https://www.uoeh-u.ac.jp/var/rev0/0073/5060/125618112136.pdf
▽横浜市立大学
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2025/20250611hara.html
▽産業医科大学
https://www.uoeh-u.ac.jp/University/Corporation/press/20250613

●「静かな退職」に関する調査レポートを発表/民間調査

エン・ジャパンは17日、人事担当者を対象に実施した「静かな退職」についてのアンケート調査レポートを発表
した。「静かな退職」とは、仕事への熱意が薄れた従業員が必要最低限の業務にしか携わらない状態のこと。
5社に1社が「静かな退職」状態の社員がいると回答。企業規模が大きいほど「静かな退職」状態の社員の存在
を認識している割合が高く、300名以上の企業では90%以上が「いる」もしくは「いる可能性がある」と回答した。
「静かな退職」状態の可能性が最も高いのは、役職に就いていない「一般社員」。職種別では「バックオフィス
職」が最多だった。
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2025/42001.html

●5月のキャリア形成活動参加率は約3割、前月比10ポイント超増加/民間調査

マイナビは13日、2027年3月卒業見込みの大学生、大学院生(3,051人)を対象に実施した「キャリア意向調査」
の結果を発表した。5月における、オープン・カンパニーなどキャリア形成活動の参加率は27.1%となり前月の
15.9%から11.2ポイント増加した。インターンシップ・仕事体験などのキャリア形成活動に参加した割合は
同11.9ポイント増の30.2%で、インターンシップ等が本格化する夏に向け学生の動きが活発化している。キャリ
ア形成活動・就職活動に向け貯金を検討している学生は79.7%、使用目的としては「交通費」が64.4%で最多、
「アルバイトができない期間の生活費」56.0%が続く。
https://www.mynavi.jp/news/2025/06/post_49246.html

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【企業】
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●事務作業を大幅に効率化、DX活用し業務改革/太陽生命

太陽生命は5月19日、DXを活用した業務改革についてプレスリリースを発表した。紙帳票の記載情報をデータ化す
る「AI-OCR技術」の導入や業務工程の見直しやシステム化といった業務改革により、事務作業の50~70%削減を目
指す。削減時間は、顧客との接点強化や従業員の専門性向上のための教育など、より付加価値の高い業務に振り向
け、生産性向上とサービス拡充をはかるとしている。
https://www.taiyo-seimei.co.jp/wr2/pdf/press_article/2025/c1lqbg00000012ph-att/20250519_1.pdf

●1万人削減「断腸の思い」津賀会長の退任など決定/パナソニックHD株主総会

パナソニックホールディングス(HD)は23日、大阪市内で定時株主総会を開き、楠見雄規社長が国内外で従業員
1万人規模を削減する計画を説明した。楠見氏は「断腸の思いだ」としつつも、同業他社に比べた収益性の低さを
指摘。「経営基盤を変えなければ、会社を持続的に成長させることは不可能だ」と述べ、株主に理解を求めた。
構造改革は2025~26年度に実施。赤字事業の改革や事業の統廃合にめどをつけた段階で、1万人規模の人員削減に
着手する。
総会では取締役選任議案など会社提案3議案が全て可決され、総会後の取締役会で津賀一宏会長の退任も正式に
決定した。津賀氏は12年に社長に就任。不振が続いていたプラズマテレビ事業からの撤退など構造改革を進め、
21年から会長を務めていた。総会には株主629人が現地出席し、所要時間は2時間1分だった。
(時事通信)2025年6月23日 ※リンク先はありません。

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【海外】
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●国別労働トピック/JILPT

<OECD>
▽「政策の不確実性」により、世界経済成長率を2.9%に下方修正/OECD経済見通し2025

経済協力開発機構(OECD)は6月3日、「経済見通し2025:不確実性に立ち向かい、成長を取り戻す(Economic
Outlook 2025: Tackling Uncertainty, Reviving Growth)」と題する報告書を公表した。それによると、高い関税
や政策の不確実性、厳しさを増す財政状況などを背景に、企業や消費者の信頼感が低下しており、2024年に3.3%
だった世界の経済成長は、2025年には、前回(3月)予測から0.2ポイント下方修正し、2.9%になると予測して
いる。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2025/06/oecd_01.html

<フランス>
▽2023年の移民の流入は年間34万7,000人に/前年比5%減少だが、2006年と比較して10万人増加

国立統計経済研究所(INSEE)の発表によると、2023年にフランスに正規入国した移民の数は34万7,000人であった。
2022年の37万5,000人からは5%減少したが、近年、増加傾向にあり、2006年の23万4,000人から10万人以上増加
したことになる。フランスの人口に占める移民や外国人の割合は、2000年代初頭から増加傾向にあり、高学歴化
も見られる。ただ、移民の就業率は国内の全居住者の平均と比べて低く、失業率は高い。また、内務省の統計に
よると、不法滞在者の在留許可数が減少し、国外退去者数が増加する傾向が見られる。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2025/06/france_02.html

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【イベント】
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●労働講座「「年収の壁?」社会保険と労働保険を学ぼう」/神奈川県かながわ労働センター

神奈川県かながわ労働センターは8月25日(月)、労働講座「「年収の壁?」社会保険と労働保険を学ぼう」を
小田原市で開催する。パートで働くとき知っておきたい「社会保険と労働保険制度」について、「年収の壁」
「収入と社会保険の関係」「被扶養者の要件」なども含め、特定社会保険労務士である講師がわかりやすく解説
する。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/dh3/cnt/f7598/#tokutei-odawara
▽チラシ
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/22174/r7odawarachirashi.pdf

●勤労者専門セミナー「イギリスの雇用権利法案における平等関係の改正と平等代表の役割について」/経営民主ネットワーク

経営民主ネットワークは7月15日(火)14時~16時、東京都千代田区の連合会館405会議室で、第35回勤労者専門
セミナー「イギリスの雇用権利法案における平等関係の改正と平等代表の役割について」を開催する。講演講師は、
内藤忍JILPT副主任研究員。参加無料。要事前申込。
参加申込先:jwdnetwork[at]mbr.nifty.com ※[at]を@にご修正ください。