メールマガジン労働情報 No.1920

■□――【メールマガジン労働情報/No.1920】

「労務費」転嫁の価格交渉、発注・受注者の行動指針を公表/公取委など ほか

―2023年12月1日発行――――――――――――――□■

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  本号の主な内容
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【行政】「労務費」転嫁の価格交渉、発注・受注者の行動指針を公表/公取委など ほか
【統計】23年の賃金引上げ企業89.1%、平均引上げ額9,437円/厚労省調査 ほか
【労使】持続可能な社会保障制度の構築に向け、提言を公表/日商・東商
【動向】22年度の転職市場、「異業種×異職種」が39%で最多/民間調査
【企業】管理職の定年を65歳に引き上げ、24年春に開始/クボタ ほか
【イベント】講座「労働組合の基本的役割~2024春季労使交渉に向けて~」/神奈川県 ほか

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【JILPT研究成果情報】
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◇資料シリーズNo.271
『「job tag」(職業情報提供サイト(日本版O-NET))のインプットデータ開発に関する研究(2022年度)』

2018年度と翌19年度に当機構が初期開発し、その後毎年度情報の拡充・更新を行っている職業情報のデータセットについて、
2022年度は主に、既存領域のうち「仕事の内容」領域の情報更新と、新たに「アビリティ」の領域の情報作成を行いました。
また、仕事量と就業者数の変化に関する調査も併せて実施しました。
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2023/271.html

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【JILPTからのお知らせ】
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★JILPTリサーチアイ(第79回)「なぜWell-beingを『幸せ』と訳すのでは足りないか?」
  労働市場・労働環境部門 研究員 鈴木恭子

Well-beingは生活の質をあらわす概念として、こんにち各国の公共政策において重要な位置を占める。
日本でも近年、学術的な議論や政策の場に限らず、企業経営やマスメディアで「ウェルビーイング」という言葉を広く目にするようになった。
本稿では労働との関連において、Well-beingという概念をどのように理解し位置づけるべきかを論じたい。
https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/079_231129.html

◇『ユースフル労働統計2023―労働統計加工指標集―』を公開しました!

既存の労働統計から新しい統計指標を計算する方法と結果を紹介する資料集です。
2022年版より書籍としての刊行・販売を取り止め、ホームページにおける掲載(PDF)に移行しました(11月28日公表)。
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/kako/2023/index.html

★企画展示「労働組合機関紙の世界」/労働図書館

JILPT労働図書館では、閲覧室内の展示コーナーで、テーマを決めて企画展示をしています。
現在は2024年2月16日(金)まで「労働組合機関紙の世界」と題し、所蔵する関連資料をご紹介しています。
https://www.jil.go.jp/lib/exhibition/index.html

◇『日本労働研究雑誌』12月号を刊行しました! 特集「多様な属性の正社員」
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2023/12/index.html

◇『ビジネス・レーバー・トレンド』12月号を公開しました!「生涯キャリアの充実と社会貢献活動」
https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2023/12/index.html

★事務職員(中途・社会人経験者)の募集について

労働政策研究・研修機構では、事務職員(中途・社会人経験者)を募集しています。
リクナビNEXT応募フォームより、必要事項を記入して送信(応募)してください。
チームワークで仕事ができる方、幅広い好奇心・チャレンジ精神をもって仕事に取組み、
新しい分野について貪欲に学び続ける意欲のある方を歓迎します。
https://www.jil.go.jp/information/koubo/shokuin/2023/index.html

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【行政】
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●「労務費」転嫁の価格交渉、発注・受注者の行動指針を公表/公取委など

公正取引委員会と内閣官房は11月29日、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表した。
わが国の雇用の7割を占める中小企業が、賃上げ原資を確保できる取引環境を整備することが狙い。
発注者・受注者に求められる行動指針の12項目、および各項目の取組事例や留意点も併せて記載。
発注者に対しては、転嫁受入れの方針決定に「本社(経営トップ)が関与する」こと、労務費の転嫁について
「発注者から定期的に協議の場を設ける」こととし、協議せずに長年価格を据え置くことは「独禁法上の
優越的地位の濫用等の問題となる恐れがある」などの留意点も付記した。

このほか、価格転嫁を求めたことを理由とする不利益取り扱いをしないこと、受注者側と共通の項目として
交渉記録の作成と保管等をあげ、これらに沿わない発注者側の行為が公正競争を阻害する恐れがある場合には、
独禁法と下請代金法により厳正に対処するとした。
指針について、連合は「賃上げ実現に向けた足がかりになるものとして評価できる」との談話を公表、
経団連は「構造的な賃金引上げの実現のために重要」として指針をホームページで周知している。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2023/nov/231129_roumuhitenka.html
▽連合事務局長談話
https://www.jtuc-rengo.or.jp/news/article_detail.php?id=1268
▽経団連
https://www.keidanren.or.jp/announce/2023/1129.html

●労務費の価格転嫁率は36.7%/中小企業庁調査

中小企業庁は11月28日、「価格交渉促進月間(2023年9月)のフォローアップ調査」結果を公表した。
価格転嫁率(コスト上昇分を価格転嫁できた割合)は平均45.7%で前回の3月調査(47.6%)より微減。
コスト要素では、「原材料費」の転嫁率が45.4%、「エネルギー費」が33.6%、「労務費」が36.7%だった。

労務費の転嫁率を業種別にみると、最上位3業種は「化学」47.0%、「情報サービス・ソフトウェア」46.5%、
「建設」41.2%、最下位3業種は「トラック運送」19.1%、「製薬」27.8%、「自動車・自動車部品」28.6%。(調査結果7頁)
価格交渉については、「発注側企業から交渉の申し入れがあり、価格交渉が行われた」が、3月時点から概ね倍増(7.7%→14.4%)に対して、
「価格交渉を希望したが、交渉が行われなかった」は10ポイント程度、減少した(17.1%→7.8%)。
https://www.meti.go.jp/press/2023/11/20231128005/20231128005.html
▽調査結果
https://www.meti.go.jp/press/2023/11/20231128005/20231128005-1.pdf

●派遣労働者「就業している」事業所、約7割で「教育訓練・能力開発」を実施/厚労省調査

厚生労働省は11月24日、2022年「派遣労働者実態調査(事業所調査・派遣労働者調査)」結果を公表した。
派遣労働者が就業している事業所は全体の12.3%で、過去1年間に派遣労働者に教育訓練・能力開発を行った事業所は69.7%。
派遣労働者については「45~49歳」「50~54歳」がともに15.8%と最も高く、平均年齢は44.3歳。
賃金(基本給、税込の時間給換算額)は「1,250~1,500円未満」が27.8%と最も高く、平均賃金は1,510円。
派遣労働者として働く理由(新規設問・複数回答)は、「正規の職員・従業員の仕事がない」(30.4%)のほか、
「自分の都合のよい時間に働きたい」(30.8%)、「専門的な技能等をいかせる」(13.8%)、
「家事・育児・介護等と両立しやすい」(11.7%)など肯定的な回答も5割超にのぼる。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/haken/22/index.html
▽報道発表資料
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/haken/22/dl/haken22_houdou.pdf
▽概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/haken/22/dl/haken22_gaikyo.pdf

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【統計】
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●23年の賃金引上げ企業89.1%、平均引上げ額9,437円/厚労省調査

厚生労働省は11月28日、2023年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果を公表した。
2023年中に平均賃金(所定内賃金の1人当たり平均額)を「引き上げた/引き上げる予定」の企業割合は89.1%(前年85.7%)で、
改定額は9,437円(同5,534円)、改定率は3.2%(同1.9%)といずれも前年を上回った。定期昇給とベースアップの実施割合は、
管理職でそれぞれ71.8%(同64.5%)と43.4%(同24.6%)、一般職で79.5%(同74.1%)と49.5%(同29.9%)だった。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/23/index.html
▽報道発表資料
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/23/dl/09.pdf
▽概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/23/dl/10.pdf

●11月の完全失業率2.5%、0.1ポイント改善/労働力調査

総務省は1日、2023年10月の「労働力調査(基本集計)」を公表した。完全失業率(季調値)は2.5%で、前月比0.1ポイント低下。
完全失業者数は175万人(前年同月比3万人減)で、2カ月連続の減少。就業者数は6,771万人(同16万人増)で15カ月連続の増加。
雇用者数は6,089万人(同8万人増)で、20カ月連続の増加。正規従業員数は3,611万人(同3万人増)で3カ月ぶりの減少。
非正規従業員数は2,140万人(同24万人増)で2カ月連続の増加。
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.html
▽概要
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf

●11月の有効求人倍率1.30倍、ほぼ横ばい続く/一般職業紹介状況

厚生労働省は1日、「一般職業紹介状況」を公表した。2023年10月の有効求人倍率(季調値)は1.30倍で、前月と比べ0.01ポイント上昇。
新規求人倍率(同)は2.24倍で、前月比0.02ポイント上昇。新規求人(原数値)は、前年同月比で1.8%減。
産業別では、学術研究、専門・技術サービス業(3.0%増)、宿泊業・飲食サービス業(2.2%増)、医療・福祉(1.3%増)などで増加、
製造業(10.6%減)、建設業(6.2%減)、卸売業・小売業(3.0%減)などで減少した。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36556.html
▽報道発表資料
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001170692.pdf

●消費者マインドの基調判断、「改善に向けた動きに足踏み」で据え置き/11月消費動向調査

内閣府は11月30日、11月の「消費動向調査」結果を公表した。「消費者態度指数(二人以上の世帯、季調値)」は
36.1(前月比0.4ポイント上昇)。各指標の前月差をみると、上昇したのは「暮らし向き」34.1と「耐久消費財の買い時判断」30.1
(いずれも同0.7ポイント)、「雇用環境」41.3(同0.6ポイント)。低下したのは「収入の増え方」38.8(同マイナス0.3ポイント)。
消費者マインドの基調判断は、「改善に向けた動きに足踏みがみられる」で据え置き。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/youten.pdf
▽統計表等
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/shouhi.html

●10月の鉱工業生産、「一進一退で推移」で基調判断を維持/鉱工業指数速報

経済産業省は11月30日、10月の鉱工業生産・出荷・在庫指数(速報)を公表した。
生産指数(季調値)は104.6(前月比+1.0%)で2カ月連続の上昇。業種別で上昇したのは「電子部品・デバイス工業」
「自動車工業」「電気・情報通信機械工業」等。低下業種は「鉄鋼・非鉄金属工業」「石油・石炭製品工業」
「パルプ・紙・紙加工品工業」等。出荷は103.6で前月比0.2%上昇。在庫は0.8%、在庫率は0.1%の上昇。
基調判断は、「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」として前月判断を維持した。
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
▽概要
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/press/b2020_202310sj.pdf


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【労使】
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●持続可能な社会保障制度の構築に向け、提言を公表/日商・東商

日本商工会議所と東京商工会議所は11月20日、「社会構造の変化に対応した持続可能な社会保障制度の構築に向けて」と題する
提言を公表した。「医療・介護DX促進」「現役世代の負担軽減」「働き方に中立的な制度への見直し」など6つの視点から、
医療・介護・年金などの分野毎に提言項目を記載。年金については、被用者保険のさらなる適用拡大を進める場合の留意点や、
「年収の壁」を要因とする就労調整の解消、高齢者の就業抑制につながっている在職老齢年金制度の見直しなどを提起している。
https://www.jcci.or.jp/recommend/2023/1120184031.html

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【動向】
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●22年度の転職市場、「異業種×異職種」が39%で最多/民間調査

リクルートは11月29日、転職市場の動向に関するレポートを発表した。同社の転職支援サービスの転職者分析
(2013年~22年度)をまとめたもの。2022年度の転職決定者の業種・職種の異同パターンを分析したところ、
「異業種×異職種」が39.3%と最多となり、過去10年間で最も高い割合を占めた。
年齢別にみると、「異業種×異職種」は20~24歳で最も高く、年齢が上がるにつれて同職種への転職割合が高くなり、
25歳以上では「異業種×同職種」が3割を超える。年齢が上がるとともに、培った経験やスキルを生かして
職種は変えずに、新たな業種へチャレンジする転職者が増えると分析している。
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2023/1129_12773.html

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【企業】
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●管理職の定年を65歳に引き上げ、24年春に開始/クボタ

クボタは11月14日、2024年4月より、エキスパート職(管理職相当)の定年年齢を60歳から65歳に引き上げると発表した。
スタッフ職(総合職相当)とテクニカル職(技能職相当)については、すでに22年4月から定年年齢を65歳に引き上げている。
今回、エキスパート職も65歳定年とすることで、「これまで培ってきた高い技術や専門性、幅広い経験を生かして活躍し、
グローバルに拡大する事業への貢献を期待している」としている。
https://www.kubota.co.jp/news/2023/management-20231114.html

●商業施設の店舗に「フレックス休暇」、年2日を休業可能に/東急モールズデベロップメント

東急モールズデベロップメントは11月20日、同社が運営する商業施設「たまプラーザ テラス」の出店店舗が、
自由に休業日を設定できるフレックス休暇制度「おみせの休日」を2024年1月30日から試験的に実施すると発表した。
年間3日の全館休館日に加えて、年間2日まで自由に休業日を設定できる。人員不足に悩む出店店舗の従業員の
リフレッシュや従業員同士のコミュニケーションを図ることで、働くモチベーションの向上を図りたいとしている。
https://www.tokyu-tmd.co.jp/wp-content/uploads/2023/11/pressrelease-tamaplaza-20231120-2.pdf

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【イベント】
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●講座「労働組合の基本的役割~2024春季労使交渉に向けて~」/神奈川県

神奈川県かながわ労働センター川崎支所は7日(木)に特定課題講座「労働組合の基本的役割~2024春季労使交渉に向けて~」を
川崎市で開催する。来年の「春闘」を目前に労働組合の基本的役割や労使交渉の意義等を解説。受講無料。要事前申込、定員38名。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/jg5/cnt/f7615/#tokuteikadai
▽案内チラシ
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/11050/r5tokuteikadai.pdf

●講演会「障害のある方の「働く」を考える」/千代田区

千代田区障害者就労支援センターは2024年1月19日(金)に講演会「障害のある方の「働く」を考える~
医療から就労の実践事例と近年の法制度を踏まえて~」を会場(東京・千代田区)とオンラインで開催する。
医療から就労の実践事例と近年の法制度を踏まえた講演会及びトークセッション。参加無料。要事前申込、1月10日締切。
▽チラシ
https://drive.google.com/file/d/15kG5K6kYeptGnA9jOm9S69xvK5r7JB3G/view
▽申込
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdJDGEpX9hdvnKFuWm3sWdGk-4Sssciy09KiR8OkM5_xdVH3w/viewform