メールマガジン労働情報 No.1881

■□――【メールマガジン労働情報/No.1881】

民事上の個別労働紛争相談内容、「いじめ・嫌がらせ」が引き続き最多/厚労省 ほか

―2023年7月5日発行――――――――――――――□■

┏━━━━━━━━┓
  本号の主な内容
┗━━━━━━━━┛

【行政】民事上の個別労働紛争相談内容、「いじめ・嫌がらせ」が引き続き最多/厚労省 ほか
【統計】高齢者世帯31.2%、世帯数・割合とも過去最高/2022年国民生活基礎調査 ほか
【労使】業況DIはマイナス8.9、前月比2.7ポイント低下/日商LOBO調査
【動向】男性育休、取得の実態と中長期の取得効果など分析/民間調査 ほか
【企業】デジタル人材教育・実践プログラムのアカデミーを創設/コクヨ ほか
【海外】フードデリバリー従事者の「最低報酬」を制定―ニューヨーク市/アメリカ ほか
【イベント】シンポジウム「日本版ディーセントワーク8指標、投資家、企業、労働組合の果たすべき役割」 ほか

━━━━━━━━━━━━━━
【JILPTからのお知らせ】
━━━━━━━━━━━━━━

☆第72回東京労働大学講座 総合講座「労働法」部門 申込受付中!
 2023年7月11日(火曜)~8月31日(木曜)
https://www.jil.go.jp/kouza/sogo/index.html

━━━━━━━━━━━━━━
【行政】
━━━━━━━━━━━━━━

●民事上の個別労働紛争相談内容、「いじめ・嫌がらせ」が引き続き最多/厚労省

 厚生労働省は6月30日、2022年度「個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表した。
個別労働関係紛争解決促進法による総合労働相談件数は124万8,368件(前年度比0.5%
増)で、15年連続の100万件超。うち、民事上の個別労働紛争相談件数は27万2,185件
(同4.2%減)、相談内容は「いじめ・嫌がらせ」が6万9,932件(同18.7%減)で、
2012年度から11年連続で最多、次いで、「自己都合退職」4万2,694件(同5.4%増)、
「解雇」3万1,872件(同4.0%減)など。なお、改正労働施策総合推進法の全面施行に
より、同法上のパワハラ相談件数は、民事上の相談件数「いじめ・嫌がらせ」とは別に
集計されている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00132.html
(報道発表資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001114181.pdf

●精神障害の労災請求件数、支給決定件数とも増加/厚労省

 厚生労働省は6月30日、2022年度「過労死等の労災補償状況」を公表した。
精神障害に関する請求件数は2,683件(前年度比337件増)、支給決定件数は710件
(同81件増)となった。支給決定件数の出来事別では「上司等から身体的攻撃、
精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」(147件)、「悲惨な事故や災害の
体験、目撃をした」(89件)、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる
出来事があった」(78件)の順。脳・心臓疾患については、請求803件(同50件増)、
支給決定194件(同22件増)。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33879.html
(精神障害事案の労災補償状況)
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001113802.pdf
(脳・心臓疾患の労災補償状況)
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001113801.pdf

●精神障害の労災認定基準、カスタマーハラスメント等を追加/厚労省検討会報告書

 厚生労働省は4日、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書を
公表した。業務による心理的負荷の大きさに関する評価表に「顧客や取引先、施設利
用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)、「感染
症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」を類型として追加した。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33933.html
(報告書)※業務による心理的負荷評価表は41頁以降参照
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/001117056.pdf

●教育訓練費用を支出した企業は約5割/厚労省

 厚生労働省は6月30日、2022年度「能力開発基本調査」の結果を公表した。
教育訓練費用(OFF-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は50.3%
(前回50.5%)。能力開発や人材育成に関して、何らかの問題があるとする事業所
は80.2%(同76.4%)で、主な問題点は「指導する人材が不足している」(58.5%)、
「人材を育成しても辞めてしまう」(50.8%)など。 自己啓発を実施した労働者は
34.7%(同36.0%)で、「正社員」(44.1%)が「正社員以外」(17.5%)より高く、
性別では、「男性」(40.9%)が「女性」(27.6%)よりも高い。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00127.html
(調査結果の概要)
https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/001111383.pdf

●「労働基準関係法令違反に係る公表事案」を公表/厚労省

 厚生労働省は6月30日、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」を公表した。
2022年6月1日から2023年5月31日の間に、都道府県労働局が労働基準法、労働
安全衛生法、最低賃金法、労働安全衛生規則等の労働基準関係法令違反の疑いで
送検し公表した内容を集約したもの。
https://www.mhlw.go.jp/content/001101046.pdf
(長時間労働削減に向けた取組)
https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html

━━━━━━━━━━━━━━
【統計】
━━━━━━━━━━━━━━

●高齢者世帯31.2%、世帯数・割合とも過去最高/2022年国民生活基礎調査

 厚生労働省は4日、2022年「国民生活基礎調査」(大規模調査)の結果を公表した。
単独世帯は1,785万2千世帯(前回2019年大規模調査1,490万7千世帯から294万5千
世帯増)、全世帯の32.9%(同28.8%)となり、世帯数、 割合とも過去最高。
高齢者世帯は1,693万1千世帯(同1,487万8千世帯から205万3千世帯増)、全世
帯の31.2%(同28.7%)となり、いずれも過去最高。児童のいる世帯は991万7千世帯
(同1,112万1千世帯から120万4千世帯減)で、過去最少。1世帯当たり平均所得金額
(2021年の年間所得)は、545万7千円で2019年調査の552万3千円から低下、生活意識
が「苦しい」とした世帯は51.3%(同54.4%)と低下。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/14.pdf
(報道発表資料)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/13.pdf

●業況判断DI、大企業製造業で3月調査比4ポイント上昇/日銀6月短観

 日本銀行は3日、6月の「全国企業短期経済観測調査」(短観)結果を公表した。
業況判断DI(「良い」-「悪い」)は、大企業製造業でプラス5(3月調査比
4ポイント上昇)、非製造業でプラス23(同3ポイント上昇)。全産業・規模計で
プラス8(同3ポイント上昇)。雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は、全
産業・規模計でマイナス32(前回と同ポイント)。
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/tankan06b.htm
(要旨)
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/yoshi/tk2306.htm
(概要)
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2306.pdf

━━━━━━━━━━━━━━
【労使】
━━━━━━━━━━━━━━

 ●業況DIはマイナス8.9、前月比2.7ポイント低下/日商LOBO調査

 日本商工会議所は6月30日、「商工会議所LOBO(早期景気観測)」6月調査結果
を発表した。業況DI(全産業合計)はマイナス8.9で、前月比2.7ポイントの低下。
サービス業では、飲食・宿泊業等で需要回復は継続する一方、人手不足に伴う受注
機会損失で業況は悪化し、小売業では、物価高による日用品等の買い控えが継続し、
スーパー等を中心に悪化。原材料・エネルギー価格高騰や人材確保のための賃上げ
等のコスト増が継続する中、コロナ禍からの挽回消費にも一服感が見られ、業況悪化
に転じたとしている。先行き見通しDIは、マイナス10.2で今月比1.3ポイントの低下。
https://www.jcci.or.jp/news/2023/0630110000.html
(6月調査結果)
https://cci-lobo.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2023/06/LOBO202306.pdf

━━━━━━━━━━━━━━
【動向】
━━━━━━━━━━━━━━

●男性育休、取得の実態と中長期の取得効果など分析/民間調査

 パーソル総合研究所は6月27日、男性育休に関する定量調査結果を発表した。
男性育休の取得率は企業間格差が大きく、取得率50%以上の企業が約2割ある一
方で、5%未満の企業が約半数であること、取得期間は「1カ月未満」が約6割
を占め、数日の休暇レベルにとどまっていることなどが明らかになった。
また、中長期(1カ月以上)の取得者がいる企業は、短期(1カ月未満)の取得
者のみの企業よりも「従業員の自主的な行動促進」「業務の見直しや属人化解消」
「従業員の視野拡大」の効果を実感している割合が10ポイント以上高い。
https://rc.persol-group.co.jp/news/202306271000.html

●「生産性年次報告2022」公表、賃金制度の課題等を検討/日本生産性本部

 日本生産性本部は6月30日、生産性に関連した調査や統計データを取りまとめ
た初の年次報告「生産性年次報告 2022」を公表した。座談会「人材を生かす賃金
制度」、「生産性と賃金」をめぐる論点の考察等を掲載。座談会では、賃金引き
上げには、事業ポートフォリオを繰り返し組み替えて生産性を高めることが必要
などの見解が示され、論点考察では、賃金の持続的な引き上げには、日本経済の
生産性の低迷の解決が求められるなどとされた。「人材を生かす賃金」に関する
アンケートの分析結果(全体版)も掲載している。
https://www.jpc-net.jp/research/detail/006474.html

━━━━━━━━━━━━━━
【企業】
━━━━━━━━━━━━━━

●デジタル人材教育・実践プログラムのアカデミーを創設/コクヨ

 コクヨは6月28日、グループ社員向けのデジタル人材教育・実践プログラム
「KOKUYO DIGITAL ACADEMY」を開校した発表した。「データとテクノロジーを活
用できる社員のスキル習得」「データとテクノロジーの活用による既存の課題解
決や新たなビジネスの創出」を目的に、2025年内に400名のデジタル人材の輩出を
目指す。「IT(Information Technology)アカデミー」「AI(Artificial
Intelligence)アカデミー」「DS(Data Science)アカデミー」の3つの講座
から構成され、身に付けたいスキルに応じて参加する。
https://www.kokuyo.co.jp/newsroom/news/category_other/_kokuyo_digital_academy.html

●ITデジタル人財の育成計画、リスキリング支援の実施も/ファミリーマート

 ファミリーマートは6月20日、今後3年間で約100名以上の「ITデジタル人財」
を育成すると発表した。各部門において、システム部門と連携しながらITデジタル
分野における業務改革を推進する人財や、社内に蓄積されたデータを活用し、担当
領域に応用できる高度なITデジタル人財を育成するもの。このほか、業務効率化・
生産性向上を目的に、希望者全員に統計知識を活用したデータ分析などの「リスキ
リング」支援も実施する。こうした取組みを通じて、店舗運営の省人化・省力化に
おけるデジタル化の推進や個店コンサルティングの強化にも繋げたいとしている。
https://www.family.co.jp/company/news_releases/2023/20230620_02.html

━━━━━━━━━━━━━━
【海外】
━━━━━━━━━━━━━━

●国別労働トピック/JILPT

<アメリカ>
▽フードデリバリー従事者の「最低報酬」を制定―ニューヨーク市

 ニューヨーク市は6月11日、同市で食品・料理の配達業務(フードデリバリーサービス)
に従事するギグワーカーを対象とする「最低報酬」を制定したと発表した。こうした
仕事の従事者は個人請負労働者と位置づけられ、連邦や州、市の最低賃金法等の適用
対象になっていない。しかし、今回の条例により、時給17.96ドルを「最低報酬」と
して確保する措置などを設けた。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2023/07/usa_01.html

<OECD>
▽世界の成長予測2.7%、日本は1.3%―「OECD経済見通し2023」

 経済協力開発機構(OECD)は6月7日、「経済見通し2023:ゆるやかに続く回復の道
(Economic Outlook 2023: A long unwinding road)」と題する報告書を公表した。
同報告書によると、依然として下振れリスクは残るものの、予想より早い中国の
活動再開を受けて世界経済に改善の兆しが見えるとして、23年の経済成長率の予測を
前回3月から0.1ポイント引上げ、2.7%とした。日本については、インフレによる
民間消費の圧迫等を見込み、逆に0.1ポイント引下げ、1.3%とした。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2023/07/oecd_01.html

●フォーカス/JILPT

<ドイツ>
▽コロナ禍の雇用維持対策―操短手当以外の企業の取り組み

 コロナ期間中の経済停滞にもかかわらず、ドイツの労働市場はきわめて安定していた。
これは主として、「操業短縮手当(操短手当)」を活用し、失業率の急増を抑制したため
であるが、操短手当以外の「企業内の柔軟な取り組み」も、雇用維持の点で労働市場の
安定化に寄与した。本稿では、こうした企業内の調整措置について、労使合意の状況や
内容を明らかにする。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2023/07/germany.html

━━━━━━━━━━━━━━
【イベント】
━━━━━━━━━━━━━━

●シンポジウム「日本版ディーセントワーク8指標、投資家、企業、労働組合の果たすべき役割」

 連合総研は(株)QUICKとの共催で7月20日(木)に、シンポジウム「日本版ディー
セントワーク8指標、投資家、企業、労働組合の果たすべき役割」をオンライン開催
する。両者は「『良い会社』であることの情報開示と労働者の立場からの責任投資原則
促進に関する調査研究委員会」を立ち上げ、「良い会社」を評価するためのS指標を検討
してきた。その内容ついて公表するとともに、専門家の意見を聞き、今後の投資活動や
企業経営の取り組みへの示唆とする。参加無料。申込ページより要参加登録。
https://www.rengo-soken.or.jp/info/2023/06/271308.html

●「『知る』ことから始める、初めての障害者雇用セミナー」/東京商工会議所

 東京商工会議所では、障害者雇用エントリー講座「『知る』ことから始める、
初めての障害者雇用セミナー」を動画配信で開催する。7月26日(水)から
8月31日(木)まで視聴可能。セミナーでは、これまで障害者の雇用実績がない、
課題があり障害者雇用に踏み切れていない企業等を対象として、障害者雇用の基礎
知識を体系的に解説するとともに、障害者雇用に活用できる公的支援策を紹介する。
今後の法定雇用率引上げへの対応を考慮した内容。現在、障害者雇用している企業も
受講可。参加無料。ホームページより申し込む。
https://myevent.tokyo-cci.or.jp/detail.php?event_kanri_id=202106