メールマガジン労働情報 No.1882

■□――【メールマガジン労働情報/No.1882】

最低賃金の改定へ向け、議論スタート/厚労省審議会 ほか

―2023年7月7日発行――――――――――――――□■

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  本号の主な内容
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【行政】最低賃金の改定へ向け、議論スタート/厚労省審議会 ほか
【統計】実質賃金1.2%減少、14カ月連続のマイナス/毎勤統計調査5月速報値 ほか
【労使】賃上率3.58%、2013年以降で最高/連合2023年賃上げ最終集計 ほか
【動向】コロナ禍の転職時の賃金変化、異業種・異職種への移動など調査/民間調査
【企業】子育て・介護を事由とした「遠隔地勤務制度」を開始/キリンホールディングス ほか
【海外】最低賃金委員会が2024年と25年の「二段階引き上げ」を勧告/ドイツ ほか
【イベント】「派遣先事業主・責任者研修会」/東京労働局 ほか

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【JILPTからのお知らせ】
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☆「最近の統計調査結果から」(2023年6月)

 官公庁から最近発表された労働統計等をご紹介しています。
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/saikin/2023/202306.html
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/saikin/2023/documents/202306.pdf

☆第72回東京労働大学講座 総合講座「労働法」部門 申込受付中!
 2023年7月11日(火曜)~8月31日(木曜)
https://www.jil.go.jp/kouza/sogo/index.html

☆『労働関係法規集2023年版』 発売中!
https://www.jil.go.jp/publication/ippan/houkishu.html

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【行政】
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●最低賃金の改定へ向け、議論スタート/厚労省審議会

 厚生労働省は6月30日、中央最低賃金審議会・目安に関する小委員会を開催し、
2023年度の最低賃金額改定の目安について議論を開始した。6月16日に閣議決定
された骨太の方針には、最低賃金について、「今年は全国加重平均1,000円を達
成することを含めてしっかり議論を行うこと」、「今後とも地域別最低賃金の最
高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る」と明記。
今回から、都道府県グループを見直し、A~Dの4区分から3区分になる。
 参考資料として、JILPTが実施した企業調査の速報結果が掲載されている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33957.html
(JILPTの企業調査・速報)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001115318.pdf

●建設業の時間外労働の上限規制についての解説とQ&Aを公表/厚労省

 厚生労働省は、建設業について、「時間外労働の上限規制・わかりやすい解説」と
「時間外労働の上限規制に関するQ&A」を公表した。建設業は、2024年4月1日から
月45時間、年360時間、年6回まで月80時間未満、年720時間等の上限規制が適用
されるが、「災害時の復旧・復興が見込まれる」場合に限り上限を超えて労働させる
ことができるとされている。「わかりやすい解説」には、いわゆる36協定届の新様式と
その記載例も掲載されている。改正労基法(2019年4月施行)による時間外労働の
上限規制は、建設業のほか、自動車運転業務、医師等について適用が猶予されてきたが、
2024年4月から、事業、業務のあり方等を踏まえた上限が設定される。
(わかりやすい解説)
https://www.mhlw.go.jp/content/001116624.pdf
(Q&A)
https://www.mhlw.go.jp/content/001115877.pdf

●「厚生労働」7月号掲載、特集は「有期契約労働者からの発展」/厚労省

 厚生労働省の広報誌「厚生労働」7月号が同省ウェブサイトに掲載された。
7月号の特集は「有期契約労働者からの発展」。無期転換に関するJILPT調査
結果や、2024年4月から、有期契約労働者の雇入時や契約更新時の労働条件
明示ルールが変わることについての解説等が掲載されている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202307.html

◇調査シリーズNo.202「無期転換ルールへの対応状況等に関する調査」結果(2020.5)
 https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/202.html

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【統計】
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●実質賃金1.2%減少、14カ月連続のマイナス/毎勤統計調査5月速報値

 厚生労働省は7日、5月の「毎月勤労統計調査」結果(速報、事業所規模5人以上)
を公表した。現金給与総額は、就業形態計で前年同月比2.5%増の28万3,868円、
うち一般労働者が同3.0%増の36万8,417円、パートタイム労働者が同3.6%増の
10万2,303円。一方、現金給与総額指数を消費者物価指数で割った実質賃金では、
前年同月比1.2%減。実質賃金の減少は14カ月連続となった。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r05/2305p/dl/pdf2305p.pdf
(統計表等)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r05/2305p/2305p.html

●二人以上世帯の消費支出、前年同月比4.0%減/5月家計調査報告

 総務省は7日、5月の「家計調査報告」を公表した。二人以上世帯の1世帯当たりの
消費支出は28万6,443円、実質で前年同月比4.0%減で、3ヵ月連続の減少。前月比
(季節調整値)は1.1%減。支出項目別でのマイナス寄与は、自動車等関係費、通信など
の「交通・通信」(マイナス1.60%)、魚介類、肉類などの「食料」(マイナス0.76%)
など。プラス寄与は、授業料などの「教育」(0.36%)、教養娯楽サービスの「教養
娯楽」(0.36%)など。勤労者世帯の実収入(二人以上の世帯)は、1世帯当たり
46万9,992円(前年同月比で実質7.5%減)。
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html
(報道発表資料)
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_mr.pdf

●消費者マインドの基調判断、「持ち直している」で据え置き/5月消費動向調査

 内閣府は6月29日、2023年6月の「消費動向調査」結果を公表した。「消費者態度
指数(二人以上の世帯、季節調整値)」は、36.2(前月比0.2ポイント上昇)。指数を
構成する各指標について前月差を見ると、「収入の増え方」は38.9(同1.0ポイント上
昇)、「雇用環境」は43.1(0.3ポイント上昇)。対して「耐久消費財の買い時判断」が
29.9(0.4ポイント低下)。消費者マインドの基調判断は、「持ち直している」で据え置き。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/youten.pdf
(統計表等)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/shouhi.html

●生活保護の申請件数、前年同月比10.6%増/4月被保護者調査

 厚生労働省は5日、生活保護法に基づく「被保護者調査」(2023年4月分概数)
結果を公表した。保護の申請件数は1万9,633件で、前年同月比1,875件(10.6%)
増。保護開始世帯数は1万7,851世帯で、同2,175世帯(13.9%)増。被保護世帯は
164万3,887世帯で、同6,397世帯(0.4%)増。被保護実人員は201万8,366人で、
同5,299人(0.3%)減。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hihogosya/m2023/04.html
(報道発表資料)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hihogosya/m2023/dl/04-01.pdf

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【労使】
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●賃上率3.58%、2013年以降で最高/連合2023年賃上げ最終集計

 連合は5日、2023春季生活闘争の 第7回(最終)回答集計(3日10:00時点)を
公表した。平均賃金方式の5,272組合では、1万560円・3.58%(定昇相当込み加重平均、
昨年同時期比4,556円増・1.51ポイント増)、うち300人未満の中小組合3,823組合は
8,021円・3.23%(同3,178円増、1.27ポイント増)。6月末時点の結果としてはいずれ
も、2013闘争以降で最高。また、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額は、加重平均
で時給52.78円(同29.35円増)、月給6,828円(同2,831円増)。引上げ率は概算で時給
5.01%、月給3.18%となり、時給では一般組合員(平均賃金方式)を上回ったとしている。
https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2023/yokyu_kaito/kaito/press_no7.pdf

●相談受付件数、「パワハラ・嫌がらせ」が最多/連合「労働相談ダイヤル」(5月)

 連合は4日、「なんでも労働相談ダイヤル」2023年5月分集計結果を発表した。
受付件数は1,097件(前年同月比96件減)。相談の内容は、「パワハラ・嫌がらせ」
(19.1%)が最多、次いで「雇用契約・就業規則」(9.3%)、「解雇・退職強要・
契約打切」(9.0%)など。業種別では「医療・福祉」(23.9%)が最多、次いで
「サービス業(他に分類されないもの)」(20.5%)、「製造業」(12.7%)など。
https://www.jtuc-rengo.or.jp/soudan/soudan_report/data/202305.pdf

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【動向】
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●コロナ禍の転職時の賃金変化、異業種・異職種への移動など調査/民間調査

 パーソル総合研究所は6月30日、「コロナ禍における転職と賃金に関する調査」結果
を発表した。コロナ禍前の転職者とコロナ禍に転職した人のサンプルを抽出し比較分析。
コロナ禍に転職して賃金が1割以上増加した人は37.2%(コロナ禍前の転職者は43.9%)
で6.7ポイント低下。職種別では、転職時賃金の増加者は「IT技術職」「その他専門
職」「営業」に多く、「事務・アシスタント」「医療・福祉専門職」「販売・サービス」
に少ない。また、コロナ禍の転職における移動形態は「同一業種同一職種」への移動が
最も多く約半数、次いで「異業種異職種」が約4分の1を占めた。
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/change-jobs-wages.html

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【企業】
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●子育て・介護を事由とした「遠隔地勤務制度」を開始/キリンホールディングス

 キリンホールディングスは6月30日、遠隔地からの勤務を行うことを認める「遠隔
地勤務制度」を開始したと発表した。対象者は、子育てや介護を事由とした国内グル
ープ従業員。通勤可能範囲(100分以内)外に居住していても、自己管理のもと円滑
に業務遂行ができ、通常と同等の成果が出せる場合に認めることとし、子育て期の共
働き家庭(15歳以下の子がいること、配偶者・パートナーを扶養していないこと)、
および要介護家族をもつ従業員を支援の優先度が高い対象とする。育児・介護を担う
従業員の転居への不安が前向きなキャリア形成等を阻害していることに対応するもの。
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2023/0630_01.html

●性差のない「育業復帰サポート手当」新設、動画制作も/ポーラ

 化粧品メーカーのポーラは4日、社内制度に「育業復帰サポート手当」を新設した
と発表した。女性従業員が育休から職場復帰する際に支給していた現行のサポート手
当を、性差なく支給するよう改正したもの。実際に育児休業を取得した男性社員から
の希望の声も、今回の改正に繋がったという。
 同社は、社内の育休取得者を軸に、同じ職場で働く同僚、育休取得した男性社員の
妻など、様々な人のリアルな声を集めた動画を制作、公開している。
https://www.pola.co.jp/about/news/e0bv2n0000009wpf-att/po20230704_1.pdf
(動画「私らしく生きるためのヒント―男性育児休業を考える」
https://youtu.be/fF4oihB5Uvs

●人的資本経営の取り組み、特設サイトを開設/NTT東日本グループ

 NTT東日本グループは6月30日、人的資本経営の取り組みの特設ページを開
設した。ステークホルダーに向け、定期的な情報開示を図るのが目的。主な開示
内容は、人的資本経営に関する各種データ(リモートワーク率、社員研修時間・
費用、副業実施者等)、および人的資本経営に向けた具体的取り組み(ジョブ型
人事制度の導入、専門性を軸とした人事給与制度への見直し、時間と場所にとら
われない柔軟な働き方の推進、自律的なキャリア形成・成長支援等)。
https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20230630_02.html
(特設サイト)
https://www.ntt-east.co.jp/sustainability/activities/diversity/humancapital/index.html

●「カムバック採用」を開始、育児等の退職者以外も対象に/JR西日本グループ

 JR西日本グループは6月30日、これまで育児等で退職した人を対象としていた
再就職支援制度を拡充し、キャリアアップ等を目指して同社を退職した人も対象と
する「カムバック採用」を始めたと発表した。同社では、多様な経験・価値観を持
つ人財を幅広く確保していく必要があるとして、社会人採用にも積極的に取り組ん
でいくとしている。
https://www.westjr.co.jp/press/article/items/230630_00_press_comeback.pdf

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【海外】
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●国別労働トピック/JILPT

<ドイツ>
▽最低賃金委員会が2024年と25年の「二段階引き上げ」を勧告

 労使と学術分野の委員で構成する最低賃金委員会は6月26日、最低賃金時給を
2024年と25年の二段階に分けて、それぞれ時給12.41ユーロと12.82ユーロに引き
上げる勧告を発表した。勧告の議決書によると、今回は労働側委員が反対した
まま、最終的に議長が議決権を行使して、多数決で決められた。2015年の法定最
低賃金導入以降、全会一致の勧告とならなかったのは初めてである。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2023/07/germany_01.html

<アメリカ>
▽州や市の一部が最低賃金を引き上げ―物価上昇反映し、時給19ドル超えの市も

 米国の州や市などの一部が2023年7月1日、最低賃金を引き上げた。物価の上昇
を反映してワシントンD.C.では時給17ドルに到達。カリフォルニア州のウェストハ
リウッド市では時給19ドルを超え、全米で最も高い水準になった。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2023/07/usa_02.html

<EU>
▽男女間賃金格差透明化指令の成立

 男女間の同一労働同一賃金の原則の実施強化に向けた法整備を加盟国に求める
指令が、5月に成立した。従業員規模100人以上の企業等に定期的な男女間賃金
格差の公表を義務付け、正当性を示すことができない5%を超える格差がある場合
には、労働者代表と共同で検証や是正措置等の実施を求めることなどが盛り込ま
れている。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2023/07/eu_01.html

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【イベント】
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●「派遣先事業主・責任者研修会」/東京労働局

 東京労働局は7月19日(水)、「派遣先事業主・責任者研修会」を港区で開催する。
男女雇用機会均等法等の派遣労働者への適用、派遣労働者と労働基準法等の適用、
外国人在留支援センターの紹介など、労働者派遣にかかわる様々なルールを説明する。
対象は主に派遣労働者を受け入れている事業主。受講無料。定員50名。参加申込ページ
より7月17日(月)までに申し込む。次回は8月23日(水)に同内容でZoomによるオン
ライン配信を予定。
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/jyukyuuchousei_050719.html

●「私の提言」を募集/教育文化協会

 教育文化協会では、連合と共催で、労働運動の前進に向けた提言を募集している。
今年は第20回で「『働くことを軸とする安心社会ーまもる・つなぐ・創り出すー』
の実現に向けて連合・労働組合が今取り組むべきこと」をテーマに募集。応募締切
は7月24日(月)必着。
https://www.rengo-ilec.or.jp/event/ronbun/bosyu/