クリエイティブなキャリアの不安定性を問い直す─夢追いバンドマンの都市・地方比較分析を通して
要約
クリエイティブ労働に関する研究において,長らくキャリアの不安定性は,1つの重要な論点となってきた。しかし,その地域的差異は十分に検討されていない。本稿では,ポートフォリオ・キャリアを視点に,バンドマンへのインタビュー調査の結果を用いて,不安定性の引き受け方をめぐる都市と地方の比較分析を行った。その結果,都市部では豊富な活動機会と関連仕事の選択肢を背景に,広く音楽に携わるキャリアが可能である一方で,バンドマン同士の熾烈な競争と活動を優先する柔軟な働き方としてフリーターが選択されていた。それに対し,地方では活動機会と関連仕事が限られる中,県外への協働的な活動展開が重視され,活動資金を確保し土日中心のバンド活動を支える手段として正社員が選択されていた。以上より,クリエイティブ労働のキャリアの不安定性は一様ではなく,地域の構造的条件に規定されるとともに,その内容と引き受け方が異なることを明らかにした。キャリアにおいて何が不安定とみなされ,どの不安定を引き受けるかは,複数の活動・仕事の組み合わせと地域的背景によって異なり,また変化するものだと考えられる。
2026年10月号(No.795) 特集●才能・技能を活かして働く仕事
2026年9月25日 掲載


