高卒就職の慣行が就業地選択にどのような影響を与えるか?─リッジ拡張型合成コントロール法を用いた因果効果の推定
要約
本研究は,日本の高卒就職制度の慣行に注目し,それが高校生の就業地選択に与える影響について分析するものである。特に,多くの都道府県で採用されている一人一社制と,その代替制度である複数応募制との就職活動結果を定量的に比較することを目的とする。高卒就職者は重要な若年労働力であり,県内就職の動向は地域の人材確保や若者流出の問題とも密接に関わっている。そこで本研究では,一人一社制から複数応募制へと制度変更を行った秋田県,鳥取県,沖縄県に注目し,制度変更が県内就職者数に与えた影響を検証した。分析にあたっては,制度変更を経験した主体が極めて限られているという課題を踏まえ,少数の介入事例であっても介入前の時系列情報を活用して比較対象を構築できる,リッジ拡張型合成コントロール法を用いて因果効果を推定した。分析の結果,秋田県と鳥取県では有意な推定結果が得られなかった一方,沖縄県では制度変更によって県内就職者数が増加した可能性が示唆された。この背景として,複数応募制を利用している実態が確認できたのが沖縄県のみであった点と,同県の県内志向が強い点が重要である。以上より,沖縄県のように県内志向が強い地域では,複数応募制の導入が県内企業への応募機会を広げ,県内就職者の増加につながる可能性がある。
【キーワード】雇用政策,人口・労働力人口,地域雇用問題
2026年8月号(No.793) ●論文(投稿)
2026年7月27日 掲載


