職業的地位による仕事の自律性と精神的健康の関連の違い─職業選択に先行する交絡要因の統制
要約
本研究の目的は,職業的地位が高いと仕事の自律性と精神的健康の関連はより強くなるのかについて,交互作用効果の交絡要因の統制の有無を考慮しつつ明らかにすることである。仕事の自律性と精神的健康の関連の職業差を指摘する先行研究の中には,職業的地位による仕事の内容の難易度や専門性の差異と関連付けて説明するものがある。しかし,仕事の自律性の心理的影響は,仕事に対する価値観などのような,仕事の内容以外の要因によって異なることも指摘されている。そして,これらの要因は,就業開始前の生活環境が成人後の職業的地位の高さに与える影響を媒介していると予想される。「東大社研若年・壮年パネル調査データ」を用いた本研究の分析からは,男性の場合のみ,交互作用項から時間不変の交絡要因の影響を除かなかったRandom EffectsモデルおよびFixed Effectsモデルにおいて,職業的地位が高い場合に,高い仕事の自律性が精神的健康状態を良好にする関係は,より強くなることが明らかになった。そして,交互作用効果から交絡要因を除去したFixed Effects Individual Slopesモデルにおいて,この関係は消失するという結果が得られた。本研究はこれらの推定から,職業選択に先行する交絡要因によって「男性の場合は職業的地位が高いほど,精神的健康に対する仕事の自律性の正の影響力が強くなる」という関係が生じていることを明らかにした。
【キーワード】職業社会,職業心理,労働者意識
2026年8月号(No.793) ●論文(投稿)
2026年7月27日 掲載


