自己調整を伴うインフォーマル学習が,ジョブ・クラフティングの2つの潮流に与える影響
要約
本稿の目的は,自己調整を伴うインフォーマル学習が,ジョブ・クラフティングの2つの潮流に与える影響を理論的に検討することである。自己調整を伴うインフォーマル学習とは,従業員が自ら学習目標を設定し,進捗を計画,モニタリングするなどの調整方略とメタ認知を用いながら,他者との相互作用を通じて知識や意味を獲得する社会的実践としての学習である。他方,ジョブ・クラフティング研究には,仕事の意味やワーク・アイデンティティの再構成を重視するオリジナルの潮流と,日々の観察できる行動に基づく従業員の調整を重視する仕事の要求度と資源理論に基づく潮流が存在する。本稿では,自己調整を伴うインフォーマル学習が,前者に対しては肯定的な自己像への欲求や仕事の有意味性を通じて影響し,後者に対しては知識・スキルの獲得や業務改善を通じて仕事の資源と要求度の調整を促して影響すると分析した。さらに,インフォーマルなオン・ザ・ジョブ・トレーニングや小集団活動を中心とした日本企業の従来のインフォーマル学習は,仕事の全体感,技能形成,業務改善を通じてジョブ・クラフティングを促進してきた一方,同質性や自発性の強制といった負の側面も有していたが,越境学習はこうした負の側面を緩和しうる。今後の研究課題としては,自己調整を伴うインフォーマル学習をラーニング・クラフティングとして再定義することを提案する。
2026年8月号(No.793) 特集●ジョブ・クラフティングを問い直す
2026年7月27日 掲載


