長期化する職業人生とジョブ・クラフティング

要約

岸田 泰則(釧路公立大学准教授)

本稿は,ジョブ・クラフティング(以下,JC)を,ワーク・エンゲイジメント向上の技法としてだけでなく,長期化する職業人生のなかで個人がキャリア課題に対応する実践として再整理することを目的とする。JC研究は,ワーク・エンゲイジメントや職務成果との関連を中心に展開してきた。しかし,経験や職位の変化に伴い,JCの目的がどのように変化するのか,また日本企業で働くミドル期以降の従業員にとってJCがいかなる意味を持つのかについては,なお十分に整理されていない。そこで本稿では,まずJC研究とキャリア・クラフティング研究をレビューし,長期化する職業人生においてJCが,自己の再定義,知識・経験の継承,役割・裁量・負荷の再調整,職場のなかでの人間関係の調整を通じたキャリア適応の実践として機能することを整理する。次に,製造業の50歳代社員を対象にした半構造化インタビューの分析により,世代継承のJC,関係再編のJC,裁量内調整のJCという3つの実践を示す。分析の結果,ミドル・シニア期のJCは仕事を広げることよりも,職場で受け入れられ,次世代が引き継げる形に仕事を組み替える点に特徴があることが明らかになった。そのためには,上司が本人の問題意識を受け止めること,また組織が小さな試行を認めることが必要となる。


2026年8月号(No.793) 特集●ジョブ・クラフティングを問い直す

2026年7月27日 掲載