日本の職場の主体性とジョブ・クラフティング─新規性・有用性の概念的・実証的検討

要約

藤澤 理恵(青山学院大学准教授)

日本企業では従業員の自主的活動を重視し活用してきた歴史がありジョブ・クラフティング(JC)概念が日本において新規性と有用性をもつかどうかは自明ではない。本稿はこの問いに,概念的検討と先行する実証研究の知見の紹介という両面から答えることを試みる。まず理論的な検討により,JCが個人の情動・意味を起点とし,タスクのみならず関係性・認知の次元をも含む点に概念的な新規性を求めた。日本的文脈においてはタスクベースの主体性が長らく制度化されており,個人的情動に駆動される主体性は日本型人事管理システムのもとで可視化されにくかったことを論じ,JCはそれらに言語と正当性を与える概念であることを示した。情動的主体性の可視化は,指示ではなく支持するという「弱い影響力」によるマネジメントの重要性を浮かび上がらせる。続いて,日本を含む5カ国データを用いた国際比較研究の知見を紹介しながら,量的国際比較研究において不可欠な測定不変性検証の手続きと意義を論じた。これらの先行研究が示す知見によれば,JCは日本においても等価に測定可能であり,かつその機能の様相は文化的文脈の影響を受けることが示唆される。


2026年8月号(No.793) 特集●ジョブ・クラフティングを問い直す

2026年7月27日 掲載