ジョブ・クラフティング研究の四半世紀─到達点と今後の展望
要約
働く個人が主体的にジョブを作り変える姿を描写したジョブ・クラフティングという概念が登場して四半世紀が過ぎ,研究も成熟の域に達しつつある。当初は,働き手が手工芸のようにジョブをクラフトすることで新たな意味ややりがいを見出すという内発的な視点に焦点が当てられていたが,2010年ごろになると仕事上の要求と資源を自ら調整する行動として再概念化され,仕事の要求度―資源(JD-R)理論の発展と歩調を合わせる形で理論の精緻化と実証研究の蓄積が進んだ。その後,接近志向と回避志向という動機に基づく分類が加わるなど概念の拡張と体系化が進み,2020年前後からは研究知見の統合を図るモデルの構築も試みられるようになった。近年はジョブにとどまらず長期的なキャリアや生活領域へと概念が広がるとともに介入研究も推進されているが,これまでの研究は働きがいやウェルビーイングといった個人の視点に偏りがちであった。今後は経営の視点も積極的に取り入れ,組織における生産性や業績の向上と個人の働きがいやウェルビーイングの両立を視野に入れた統合的な理解と,両立を可能にする施策や介入の効果検証が求められるとともに,デジタル化やAIの発展に伴う組織・仕事・働き方の変容を踏まえた新たなクラフティング理解の深化も望まれる。
2026年8月号(No.793) 特集●ジョブ・クラフティングを問い直す
2026年7月27日 掲載


