1980~2020年の日本の労働市場におけるタスク分布の変化─産業構造の変化とICT導入の影響

要約

小松 恭子(JILPT副主任研究員)

麦山 亮太(学習院大学教授)

本研究は,1980~2020年の日本の労働市場におけるタスク分布の変化を明らかにするとともに,その変化が産業構造の変化やICT導入とどのように関連しているのかを検証する。「職業情報提供サイト(job tag)」の数値情報を『国勢調査』の職業へとマッチングし,非定型分析,非定型相互,定型認識,定型手仕事,非定型手仕事の5つのタスク指標を作成して,これらのタスク分布の変化とその要因を分析した。分析の結果,第一に,非定型分析および非定型相互タスクは増加し,非定型手仕事タスクもわずかに増加する一方,定型手仕事タスクは大きく減少していた。しかし,同じ定型タスクであっても,定型認識タスクはむしろ増加していた。第二に,1980年から2000年にかけてのタスク分布の変化には,農林漁業のシェアの縮小が最も大きく寄与していた。一方で,2000年以降については,医療・福祉業の増加がとくに非定型手仕事タスクの増加に寄与していた。第三に,JIPデータベースを用いた産業レベルの分析からは,ICT資本よりも非ICT資本の導入の方が非定型分析・非定型相互タスクの増加と強く関連しており,ICT導入が定型タスクを代替しているとは必ずしもいえなかった。以上の結果は,非定型分析・非定型相互といった高度な頭脳的タスクの増加と定型手仕事タスクの減少という点では,定型偏向的技術進歩(Routine-Biased Technological Change)理論の予測と整合的である。一方で,定型認識タスクの増加やICT導入による定型タスクの代替効果が確認されない点は,同理論を日本の労働市場に単純に適用することの限界を示唆している。

【キーワード】研究開発・技術革新,労働市場,職業一般


2026年7月号(No.792) ●論文(投稿)

2026年6月25日 掲載