主観的な「ブラック企業」認識の変化と「ブラック企業問題」の現状

要約

小林 徹(獨協大学教授)

2013年の「ブラック企業」問題の社会的な注目以降,経済環境が回復するなか「働き方改革」も実施され,労働環境の改善傾向が報じられるようになってきた。そこで本稿では,労働者の主観的な「ブラック企業」認識と職場の問題状況がどのように変化したか,主観形成のされ方にも変化があるかどうかを分析し,問題が解消に向かっているかを検討した。分析の結果,職場の問題が解消するなかでも労働者の「ブラック企業」認識得点は高まっていき,近年ほど認識がされやすい傾向になっていることが分かった。要因分解の結果からも,「ブラック企業」認識の高まりの主要因は,労働者の主観形成構造が変化して容易に「ブラック企業」と思いやすくなったことが示され,近年の職場の問題の程度については「ブラック企業」認識を下げる要因として確認された。かつて社会問題として議論された若年正規雇用者を使いつぶす「ブラック企業問題」は解消に向かっており,近年では「ブラック企業」と認識されぬよう企業側が注意すべきHRMの問題に様相が変わっていると考えられる。


2026年7月号(No.792) 特集●過酷な労働を取り巻く諸問題

2026年6月25日 掲載