職場環境の過酷さと孤立・孤独感への対処

要約

佐々木 那津(東京大学大学院准教授)

本稿では,仕事における孤立・孤独を,過酷な労働環境のもとで生じうる重要な経験として整理した。仕事における孤立は,社会的接触や支援資源へのアクセスの客観的な乏しさを指し,仕事における孤独は,職場で求める人間関係と実際の人間関係との不一致から生じる不快な主観的体験である。両者は関連するが同一ではなく,職場に人がいても,支援,信頼,承認,所属感が得られない場合には孤独感が生じうる。一方で,テレワークや単独作業などの構造的な孤立が,すぐに孤独につながるわけではない。長時間労働,過重業務,人員不足,心理的安全性の低さ,ハラスメント,テレワークや単独作業などの職場要因は,職場内の社会的接触,情報共有,支援希求,承認,包摂の機会を制限することで,仕事における孤独を生み出す可能性がある。仕事における孤独は,燃えつき,抑うつ,不安,疲労感,ウェルビーイングの低下に加え,職務満足度,仕事のパフォーマンス,組織コミットメント,離職とも関連する。日本人労働者を対象とした縦断研究でも,仕事における孤独感が強いことは6カ月後の離職と関連することが示された。介入には,労働者個人への支援と,孤立・孤独を生みにくい職場環境を整える組織的対応の両方が必要である。仕事における孤立・孤独は,個人の弱さではなく,職場環境と相互に関連しながら形成される健康・就労上の課題として捉える必要がある。


2026年7月号(No.792) 特集●過酷な労働を取り巻く諸問題

2026年6月25日 掲載