地域の人的資本指数(RHCI)─新指標の提案

要約

鶴見 哲也(南山大学教授)

馬奈木 俊介(九州大学主幹教授)

世界的な人材獲得競争が激化するなかで,日本の賃金競争力の相対的低下は,民間およびアカデミアにおける高技能人材の誘致・定着を難しくしている。同時に,生成AIを含む技術進歩は仕事内容の変化に影響し,地域の総合的な魅力が人材の立地選好に与える影響を強めている。本稿では,地域における「賃金以外の価値」を定量化するための複合指標として,「地域の人的資本指数」(Regional Human Capital Index:RHCI)を提案する。具体的には,RHCIに含まれるべき要素について,先行研究を基に,「知識・イノベーション生産」「グローバル到達性・結節性」「生活の質・ウェルビーイング」「社会関係資本・シビックプライド」「スキル蓄積・包摂」の5つの柱を提示する。これらはBeyond GDPの潮流,特にウェルビーイング・地域アメニティ・社会関係資本の知見を統合することを目指すものと言える。指標作成の方法論についても提示し,ロバスト性を担保することの重要性も示す。さらに,応用例として,東北〜北海道,九州,東京の三地域を取り上げ,RHCIの視点から「選ばれる地域」の再定義と国際発信(“ミシュラン化”)の戦略を示す。


2026年6月号(No.791) 特集●雇用関係におけるメリトクラシー

2026年5月25日 掲載