企業固有の技能における虚実
要約
企業固有の技能(firm-specific skill)に虚実があるとすれば,「虚」には,2つの意味での誤解があると思われる。1つには,日本にのみ存在,2つには,この技能が競争力の源泉となるという思い込みである。企業固有の技能の存在は,内部労働市場の存在とほぼ同義であり,ゲイリー・ベッカーやドーリンジャーとピオリの研究などに明らかなように,先進国共通にみられる。ただその技能の内容については,具体的なものは少なく,小池和男の「キャリアの組み方」がもっとも深く考えられた定義である。その概念を乗り超えるには,2つ目の生産性や競争力との関係が重要だが,それは小池の「知的熟練」の概念と関係する。それが競争力の源泉である可能性はあるが,少なくとも「企業固有の技能」は,それだけで競争力につながっているとはいえない。企業固有技能の「実」は,かなり複雑で,定義にもよるがさまざまなタイプがある。その解明は,小池以降の研究者の課題といえる。
2026年6月号(No.791) 特集●雇用関係におけるメリトクラシー
2026年5月25日 掲載


