日本の人事制度は,企業の「能力観」をどの様に体現しているか?─日本企業における職能資格制度の機能
要約
本稿では,企業が従業員のどの様な側面を「能力」として評価しているのかという,企業の「能力観」を人事制度,具体的には職能資格制度の機能を通じて明らかにする。資格制度とは職制とは別に従業員の序列や処遇を明確にするために設けられている制度であり,それが従業員の職務遂行能力に基づいて運用されるのが職能資格制度である。本稿では,職能資格制度が体現する能力観について,①職務等級と職能資格制度,②職能資格制度と職能要件,③職能資格制度と人事考課,④発揮能力と保有能力,という4つの側面から検討する。最後に,職能資格制度が体現する「能力観」について日本的雇用制度との関連でまとめたい。職能資格制度は空席という昇級「枠」の有無が昇級を決定する職務等級とは異なり,少なくとも理念としては昇格「枠」が存在しない「絶対能力」としての職務遂行能力を評価する。また空席を前提に昇級が行われる場合,特定職務の遂行の有無が昇級を決定するが,職能資格制度の職能要件は特定の職務ではなく,「部長ができる能力,課長ができる能力」を定めている。そのため,賃金も「現在部長をしているかどうか」(発揮能力)という職務給ではなく,「部長ができる能力」(保有能力)という職能給が重要である。こうした職能資格制度は,長期雇用を基調とするメンバーシップ型雇用制度と密接な関係にある。従って,職能資格制度が変わらない限り,日本的雇用制度は維持されると考えられる。
2026年6月号(No.791) 特集●雇用関係におけるメリトクラシー
2026年5月25日 掲載


