「育つ力」と「育てる力」─経験学習と実践コミュニティの観点からの考察
要約
本稿は,「育つ力」と「育てる力」を経験学習と実践コミュニティの観点から考察する。経験学習理論によれば,育つ力とは経験から学ぶ能力であり,「挑戦的課題の追求」「批判的内省」「仕事の楽しさ」「学習志向」「発達的ネットワーク」という5つの要素から捉えることができる。一方,組織における育てる力は,経験学習を支援するOJT,および実践コミュニティ型の職場という点から捉えることができる。優れた育成力を持つOJT担当者は,「目標のストレッチ」「進捗確認・相談」「内省の支援」「ポジティブ・フィードバック」という4つの指導方法を通して,部下・後輩の経験学習を支援している。また,実践コミュニティ型の職場は,共有された関心や目標としての「ドメイン」,学び合うことを可能にする関係性である「コミュニティ」,共有された知識のレパートリーとしての「プラクティス」から構成されるが,こうした特性がメンバーの知識創造や知識共有を促進する。今後の課題として,①ジョブ・クラフティングの観点から育つ力を解明すること,②育てる力と関係が深いコーチングを学習理論の面から再検討すること,③実践コミュニティ型の職場がどのような人事システムによって支えられているかを探求することが挙げられる。
2026年6月号(No.791) 特集●雇用関係におけるメリトクラシー
2026年5月25日 掲載


