労働時間性の判断における職務性/業務性の内容─非職務的活動(自己研鑽,研修,会食等)に関する裁判例を中心に
要約
本稿は,労働基準法ないし労災認定基準において労働時間か否かが問題となりやすい,研修・自己研鑽,会食等の非職務的活動の労働時間性を判断した裁判例を中心的な検討素材として,労働基準法上の労働時間の重要な要件(要素)の1つである「職務性」の観点から,労働時間概念の相対性を検討するものである。労働基準法上の労働時間は,判例上「使用者の指揮命令下にある時間」と定義されるが,その要件(ないし考慮要素)として使用者の関与と職務性を用いる考え方が有力である。また,(割増賃金請求訴訟で問題となる)労働基準法上の労働時間と(労災関係訴訟で問題となる)労災認定基準上の過重労働等の判断基準である労働時間は異なりうるとの指摘がある。本論文は,職務性の観点から各類型での労働時間性の判断事例等を分析する。割増賃金事案では使用者の具体的指示が重視され,労災民訴・労災事案でも重要であるが,一部には不可避性や労働負荷(心理的・身体的負担)の観点での職務性を重視し,労働時間と認める傾向もみられる。限られた数の裁判例に見出される,類型間の微量な相違からの示唆ではあるが,本稿は労働時間認定における「職務性」は,①業務との関連性,②労働負荷,③使用者への利益性という複数の観点を含む概念であり,一部の裁判例では割増賃金事案と労災事案とで重視される要素が異なるため帰結がずれる可能性があると考える。これは,補償目的(割増賃金)と健康安全確保目的(労災)の違いによる労働時間概念の相対性ともいえる。
2026年5月号(No.790) 特集●生活時間と休み方から読み解く労働
2026年4月27日 掲載


