テレワークの評価と課題─「全国就業実態パネル調査」の経年変化からの示唆

要約

久米 功一(東洋大学教授)

萩原 牧子(リクルートワークス研究所主幹研究員)

本稿は,日本におけるテレワークの普及がもたらした生活と仕事の変化について,先行研究を概観することに加えて,リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用いて2016年と2024年を比較して,テレワークの進展とその影響を分析したものである。分析によると,働き方改革およびコロナ禍を背景に,テレワーク実施率と実施時間はいずれも増えており,とくに中堅層や都市部で拡大がみられた。制度としての導入も進み,従来の時間制約のある人の持ち帰り残業的性格から,在宅勤務を中心とする柔軟な働き方へと質的転換が生じていた。生活面では,テレワークは生活時間の再配分をもたらし,既婚者を中心に生活満足度・仕事満足度を高める傾向が確認された。ただし,家事・育児時間の増加はテレワークの有無だけでは説明できず,性別役割分業の構造は大きくは変化していない。仕事面では,テレワーク実施者の本来業務比率や働き方の自律性が高まり,柔軟性の向上は満足度の上昇と関連していた。他方,出社/テレワークのハイブリッド型雇用者の成長実感が低下していた。ウェルビーイングでは,テレワークの有無よりも職種や性別による差が大きく,心身の不調や不眠などへの配慮が必要である。これらの結果は,テレワークが生活満足度向上に資する一方,仕事と家庭の境界管理,職場設計やマネジメントの再構築,ウェルビーイングの増進といった新たな課題への対応が求められることを示唆している。


2026年5月号(No.790) 特集●生活時間と休み方から読み解く労働

2026年4月27日 掲載