生活時間の貧困研究─測定手法と課題
要約
人々の働き方や生活様式は,世帯間で,あるいは同じ世帯でも世帯員の間できわめて多様である。所得や資産が十分にあっても,さまざまな要因により,家庭生活にとって必要不可欠な時間(家事,家族へのケア(育児,介護など),個人的ケアに充てる時間)が十分に取れず,生活の質が大きく損なわれるケースが存在する。これを「時間の貧困(Time Poverty)」という。本稿では,時間の貧困の測定手法として,レヴィ経済研究所の研究グループが開発したLevy Institute Measure of Time and Income Poverty(LIMTIP)やMerz and Rathjen(2014)が提案した相互依存的多次元貧困(Interdependent MultidimensionalPoverty)(IMDP)を取り上げ,それらの指標の特徴や実際の分析事例について考察する。また,公共政策(保育・教育・介護など)が家族の生活時間の確保にどのように関連しているかに着目した研究を中心に,近年の代表的な時間の貧困研究を取り上げ,それらの結果の概要と今後の課題・展望について論じる。生活の質に焦点をあてた貧困の測定を行うことは,人々の働き方や家庭生活のあり方を問い直すことにつながる。
2026年5月号(No.790) 特集●生活時間と休み方から読み解く労働
2026年4月27日 掲載


