オランダにおける「フレキシブル・ワーク法」に基づく柔軟な働き方の申請権

要約

有泉 明(東京大学大学院助教)

昨今の日本で議論が活発化している「働き方の柔軟性」には,働く時間の柔軟性と場所の柔軟性という2つの観点がありうる。これらを促進すべく,現在の日本では,労働基準法における多様な労働時間制度の導入や,テレワークのガイドラインの作成といった施策が講じられているものの,労働者が主体的に柔軟な働き方を実現することはなお困難な状況にある。この点について,オランダでは「フレキシブル・ワーク法」に基づき,労働者が使用者に対して労働時間・就業場所の調整を申請する具体的権利が認められており,注目に値する。本稿は,このオランダの労働時間・就業場所調整申請権について,その導入の背景,現行法の内容,最新の動向,社会調査などを概観することにより,その特徴を分析し,日本法への政策的示唆を導くことを目的とする。本稿での分析の結果,オランダの労働時間・就業場所調整申請権の特徴として,労働者の属性を問わず一般的に認められた権利であること,使用者の負担や事業運営の責任にも配慮して種々の要件が定められていること,そして労使間の自主的な協議を促進するものとして機能していることが明らかになった。日本法における柔軟な働き方の実現にあたって,本稿から導かれる政策的示唆として,労働者に具体的権利を付与するという新たなアプローチの可能性を提示していること,使用者側の事情への注意を喚起していること,また労使間の協議の重要性を強調していることが挙げられる。

【キーワード】労働時間・休日休暇,個別的労働関係法


2026年2・3月号(No.788) 公募特集●フレキシブルな働き方の実態・影響・課題〈研究ノート(投稿)〉

2026年2月25日 掲載