労働者のテレワーク希望の利益と拒否の利益の法的構造

要約

木内 大登(同志社大学大学院博士後期課程)

本稿は,労働者がテレワーク(在宅勤務)を「希望する利益」と「拒否する利益」について,その法的構造を労働契約法理論の観点から,ドイツの法状況も参照しつつ,検討することを目的とする。その検討にあたっては,労働者および使用者が,テレワークを希望・拒否することのいずれについても一定の社会的価値が認められることを前提とした上で,テレワークの実施をめぐって生じうる労使間の利害対立を,法的観点からいかに調整すべきかを考察する。具体的には,労働者の各利益に着目し,第一に,これらの利益がいかなる根拠に基づき法的価値を認められるのか,第二に,これらがいかなる理論構成を通じて具体的な労働契約上の権利義務関係に反映されうるのかを検討課題とする。そして,労働者のテレワーク希望の利益については,継続性原理およびその手段としての柔軟性原理,仕事と生活の調和の原則(労契法3条3項)等に基づいて法的価値が正当化されること,また,この利益が,信義則(同法3条4項)を通じて,テレワーク請求権を含む労働契約上の権利義務関係の基礎となることを示す。次に,労働者のテレワーク拒否の利益については,私生活の自由・領域プライバシー(憲法13条・35条)に根拠を有する利益として位置づけた上で,使用者がテレワーク命令を行うに際しては,就業規則の合理性審査(労契法7条・10条)および権利濫用規制(同法3条5項)を通じて当該利益に対する最大限の配慮が要請されることを示す。

【キーワード】労働条件一般,労働法一般,個別的労働関係法


2026年2・3月号(No.788) 公募特集●フレキシブルな働き方の実態・影響・課題〈論文(投稿)〉

2026年2月25日 掲載