こども性暴力防止法に基づく性犯罪歴の確認と人事管理上の措置
要約
2024年に成立したこども性暴力防止法は,児童等に対して教育,保育等の役務を提供する事業者の一部(対象事業者)に対し,児童等と接触のある所定の業務(対象業務)に現に従事させている者や従事させようとする者等について,一定の性犯罪歴(特定性犯罪)の前科の有無を確認する義務を負わせるとともに,犯歴情報を国から事業者に提供する仕組みを創設するものである。本法は,対象事業者が一定の場合に児童対象性暴力等の防止措置を講じることを義務づけているが,現に雇用する者が特定性犯罪の前科を持つことが判明した場合には,本法に基づく防止措置として,配置転換等により対象業務から外すことが原則として義務づけられるものと解すべきである。特定性犯罪の前科を持つ労働者に対する人事管理上の措置をめぐっては,本法に基づく防止措置としてどのような措置が義務づけられるかという問題とは別に,労働契約に基づく人事権の行使としてどのような措置をとりうるかが問題となる。従来の裁判例には,犯罪歴の詐称を理由とする懲戒処分や解雇の効力を認めるものがあるが,2015年改正で創設された要配慮個人情報の取得に関する個情法の規制の内容を踏まえると,現行法上は,犯罪歴の詐称は懲戒事由や解雇事由には該当しないものと解される。他方で,労働者が特定性犯罪にあたる行為に及んだことは,企業の名誉・信用を毀損するもの,あるいは,適格性の欠如を示すものとして,懲戒事由及び解雇事由に該当しうる。
2026年1月号(No.786) 特集●情報への配慮・配慮のための情報
2025年12月25日 掲載


